2009年・今年聴いたコンサート(器楽・室内楽編)

【ピアノ】
2月18日(水)  ラファウ・ブレハッチ (東京文化会館)
         モーツァルト  ピアノソナタ第16番変ロ長調 K.570
         ベートーヴェン ピアノソナタ第2番イ長調 Op.2-2
         ショパン     4つのマズルカ Op.17
         ショパン     ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53 「英雄」
         シマノフスキ  ピアノのための変奏曲変ロ長調 Op.3

       随所にきらめきはあったものの、全体を貫く骨格のようなものがなく、散漫な印象。
       ツィメルマンの弾き方そっくりの箇所があったり、テンポをいじってみたり、いろいろ
       やろうとしているようだが局所的にとどまっていて、ぐわっと鷲づかみにする迫力に
       欠ける。その中で、シマノフスキは説得力があった。モーツァルトも外連味のなさが
       プラスに働いた好演だったと思う。

4月22日(水)  アブデル・ラーマン・エル=バシャ (東京文化会館・小ホール)
         ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
         ベートーヴェン ピアノソナタ第21番ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
         ラヴェル     高雅で感傷的なワルツ
         ラフマニノフ   ショパンの主題による変想曲Op.22
         (アンコール エル・バシャ 「メスト」、メンデルスゾーン/ラフマニノフ編 「夏の夜
         の夢」よりスケルツォ)

       テクニック抜群。どんなに難しそうなパッセージでも事もなげに弾いてみせ、鮮烈。
       ただ、その先、心に食い込んでこない(当方の体調のせいだったかもしれない)。
       音がバランバランと響く感じ。

       ベートーヴェンはかっちりと弾きながらも空間的な広がりがあり、良い演奏だとは
       思うものの、月光はアンスネスの名演が耳に残っており、それと比べると平凡に
       感じてしまう。ワルトシュタインは聴き応えがあった。ラヴェルが一番良かったよう
       に思う。いずれにしても、物凄い割には感動が伴わず、不完全燃焼の味気なさが
       残ってしまった。

6月 9日(火)  藤井一興 (東京文化会館・小ホール) ★★★
         メシアン 「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」

       入魂の演奏!感銘を受けた。

       唯一残念だったのは、譜めくりの人を置かず、自分で楽譜をめくったため、ページ
       の変わり目で演奏にわずかな隙が生じた箇所があったことだ。特に第6曲、第14
       曲はちょいと無理があったのでは。さすがに(譜めくりしながら弾いたらとんでもな
       いことになりそうな)第10曲と第15曲は、完全に暗譜で弾いていた。

10月 2日(金) パウル・バドゥラ=スコダ (東京文化会館) ★
         ハイドン     「皇帝讃歌」による変奏曲
         ハイドン     ピアノソナタハ短調 Hob.XVI-20
         ベートーヴェン ピアノソナタ第32番ハ短調 Op1.11
         マルタン     フラメンコのリズムによる幻想曲
         シューベルト  4つの即興曲 D899 Op.90
         (アンコール シューベルト 即興曲D935から、シューベルト ラークワルツ、
         Jシュトラウス ピチカートポルカ)

       御年82歳の大御所。昨年は、イエルク・デムスの80歳記念コンサートを聴いたが、
       この2人の老巨匠はどちらもシューベルトが抜群に素晴らしい! もちろん、ベート
       -ヴェンもいいのだけれど。思いどおりに弾けないもどかしさもあるのだろうが、体
       に染み付いた音楽の強さとでも言うのだろうか、参りました、の一言。


【フルート】
6月23日(火) ギュンター・フォーグルマイヤー(Fl)、シュテファン・メンドル(P)
          (東京文化会館・小ホール) ★
         マルティヌー  ファーストソナタ
         ライネッケ    ソナタ「ウンディーネ」
         デュティユー  ソナチネ
         ユー       ファンタジー
         メシアン     黒つぐみ
         マルタン     バラード
        (アンコール ボルヌ「カルメン幻想曲」ハバネラ以降、クライスラー「愛の悲しみ」)

       フォーグルマイヤー氏はウィーン・フィルのフルート奏者。一音たりともおろそかに
       しない、非常によくコントロールされた見事な演奏。派手さはないが、響きの美しさ
       を追求し、徹底的に磨きこんだ精緻な演奏だ。

       マルティヌーやライネッケは、自分もちょろっと手を出しているが、天と地ほども次元
       のかけ離れたこういう優れた演奏を聴いてしまうと、ざばざば吹き流している我が身
       が恥ずかしく、音楽における表現とは何かを、改めて考えさせられた。

【チェロ】
10月30日(金) オレグ・ブガーエフ(Vc)、アリス=紗良・オット(P) (日経ホール) ピアノのみ★
         バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
         バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009
         ラフマニノフ ヴォカリーズ
         ラフマニノフ チェロソナタト短調 Op.19
         (アンコール ラフマニノフ チェロソナタの第3楽章)

       ラフマニノフはつややかな音で切々と歌い、素晴らしかったが、バッハは安定せず。

       バッハの無伴奏は、ブルネロ、ヨーヨー・マ、マイスキー、ウィスペルウェイなど、随
       分と大勢の演奏を聴いてきたが、名の通ったチェリストでもこの曲を名演と言える
       レベルで聴けることはあまり無い。自分が聴いた中では、ペレーニの演奏が、真に 
       素晴らしいと思った唯一の演奏である。聳え立つ名曲にして難曲だ。

       ピアノのアリス=紗良・オットは、ドイツ・グラモフォンからCDが何枚かリリースされ
       ている売り出し中の若手。ありがちな「ビジュアル先行」かと思っていたが、実際に
       聴いてみて、それは大いなる誤解であることがわかった。芯のしっかりした強靭な
       音を出し、フレーズを捉える感覚もとても優れているように思える。単に上手いだけ 
       ではなく、聴衆を惹きつける何かを持っている。伴奏ではなく、リサイタルで聴いて
       みたいピアニストだ。
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by bibinga | 2009-12-29 23:06 |  

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