コンサート備忘録(アンナ・ヴィニツカヤ)

d0135403_1024144.jpg2010年2月10日(水) 日経ホール

アンナ・ヴィニツカヤ ピアノリサイタル

J.S.バッハ   パルティータ第6番ホ短調BWV830
ラヴェル    ソナチネ
ムソルグスキー 展覧会の絵

(アンコール)ドビュッシー 映像第1集~第3曲「動き」


エリザベート王妃優勝の名に恥じない、将来性を感じさせるピアニスト。

最初のバッハはいただけなかった。きっちり弾いているが、何をやりたいのか伝わってこない。特にサラバンドのような緩徐曲で音楽が持たない。両隣の(見知らぬ)おじさん達は爆睡していた。

ラヴェルは一転、素晴らしい演奏。躍動感に満ち、きらめき・輝きがあり、そして香りと軽さ。非の打ち所のない名演。(おじさん達も真剣に聴いていた)

展覧会は、ラヴェルをさらに上回った。考え抜かれたダイナミクス、表情の変化、長いフレーズ感でのエネルギーの持続、大きなうねり、圧倒的な迫力。確信に満ちた演奏であり、本当に凄かった。

この曲は、ピアノリサイタルではあまり取り上げられないような気がする。直近で聴いたのは、4年ほど前。期待の若手と言われる某日本人ピアニストがウィグモアホールで弾いた。その時との比較でも、ヴィニツカヤさんのがっしり曲を捉えきった演奏は圧倒的だと思った。

アンコールはドビュッシー。ラヴェル同様、活き活きとして、明快かつ繊細で、素晴らしかった。

このピアニストは、ラヴェルやドビュッシーが好きなのではないか。これらの曲を弾いている時の姿は、本当に嬉しそうで、輝いている。そして演奏の完成度も極めて高かった。

しかし、どういうわけか、聴いての感動は、展覧会に及ばない。なぜだろう?

Just印象であるが、ラヴェル、ドビュッシーは、曲に演奏者が吸い寄せられていた。対して展覧会では、演奏者が曲を自分の方にぐいとひきつけていた。「曲は作曲者のもの、演奏は演奏者のもの」、そんなことを考えさせられた演奏会だった。

ビル建替で新装なった日経ホールに足を運ぶのは2度目であるが、オフィスビルの中のホールにしては音響は悪くない。王子ホールを一回り大きくしたようなホールで、ややデッドではあるが、空間にゆとりがあり、圧迫感が無い。日経主催公演は値段も3500円と安く、この値段でこれだけ良質のコンサートを楽しめれば御の字である。
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by bibinga | 2010-02-10 23:59 |  

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