コンサート備忘録(アンデルシェフスキ)

2007年12月11日(火) クイーン・エリザベス・ホール

ピョートル・アンデルシェフスキ(P)

バッハ パルティータ第2番
シマノフスキ マスク
シューマン フモレスク
バッハ パルティータ第1番


この日のプログラムは、当初はバッハのイギリス組曲3、4、6番のはずであったが、結局すっかり変わって、上記の曲目となった。

アンデルシェフスキは、2004年10月17日にウィグモアホールで聴いて以来、2度目である。彼のCDはほとんど全て持っており、CDで聴く限り、なかなか良い。音が透明で美しく、繊細な表情付けにセンスを感じる。

しかし、3年前にウィグモアホールで聴いた実際の彼の演奏は、CDよりもずっと堅く、好感が持てなかった。そこで、今回、再確認である。

残念ながら、今回の演奏も、やや期待外れに終わった。

本番に弱いのだろうか、、、1曲目のパルティータ2番では、音に切れが無く、伸びてこない。音の空間が狭く、彼とピアノの周囲だけで鳴っているような感じがする。彼はピアノに非常に近く座るが、そのせいだけではなかろう。

強音が堅く、耳に障る。ミスタッチも多い。自分はミスタッチを気にする方ではないが、それでもここまで多いと若干興ざめするのは否めない。

良い点はたくさんある。弱音が美しい。ペダルを使わずに指でレガートを出せる。テンポが遅い楽章でも根底にしっかりしたリズム感があり、だらだらしない。各声部の弾き分けも、何を聞かせたいのかがはっきり見え、知的に構築されている。

音楽の流れはとても自然で、随所に美しい閃きがあり、心に響いてくるものがある。しかし、それが持続せず、どこかぎこちない。

演奏は徐々に良くなり、2曲めのシマノフスキは、濁りの無い純粋な音が曲想によく合っていた。この曲では演奏上の欠点はさほど目立たず、曲に集中できた。

後半、だいぶ堅さがほぐれてきて、音楽が自由に伸縮するようになってきた。特に、最後のパルティータ1番はバッハの様式感をきちんと守りつつ、歌心もある見事な演奏だったと思う。しかし、強音におけるガツンとした堅い音は、最後まで変わらず、この音だけは好きになれない。

アンコールは、なんと、1曲目のパルティータ2番をもう一度弾いた。
「不本意な出来だったので、もう一度弾きます。20分もかかるので、お時間のない方はどうぞお帰りになって。。。」と挨拶をして、弾き始めた。

このアンコールの演奏は、確かに、最初の演奏よりも格段に良かった。空間がずっと広がり、音が生きていた。

彼はとても真面目なのだろう。曲をよく分析し、自分がどういう表現をしたいのか、本当によく考えて演奏している印象を受ける。しかし、おそらく、あまり器用なタイプではないのだろう。高度なテクニックを持っているのに、コンサートでそれを100%発揮するに至っていないような気がする。惜しい。

彼のCDは、どれもとても好きだ。コンサートの後、何枚か聴き直してみたが、本当に澄んだ音で、優しく、自然で、心にすっと入ってくる。
コンサートホールでもこういう音楽を聴かせて欲しいものである。
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by bibinga | 2007-12-11 23:36 |  

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