コンサート備忘録(ガッティ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ)

2007/11/30 ロイヤル・フェスティヴァル・ホール

ダニエレ・ガッティ指揮
ヴァディム・レーピン(Vn)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

シューマン マンフレッド序曲
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー 交響曲第5番


ガッティは、大好きな指揮者である。大きなフレーズ感、歌い回しの感性が私のツボにはまっている。この日の演奏も「ガッティ節」全開で大いに楽しませてくれた。

メンデルスゾーンでのレーピンのソロは、ホールの音響がデッドなせいか、音が今ひとつ伸びて来なかったが、細かい音符を一音一音明確に弾き切る技術の冴えはさすがであり、安易に感傷に流れることなく、音楽そのものが持つ美しさを味わわせてくれた。

圧巻はチャイ5。特に第2楽章は素晴らしかった。まず、ホルンを筆頭に管楽器のソロの美しさは特筆もの。そして、ガッティのフレーズの歌わせ方はしなやかで、広がりがあって、音の絨毯がふわりと宙に浮くかのよう。その大きなうねりにいつまでも身を任せていたい、と思いながら聞いていた。

ガッティの音楽作りには一貫性があり、全体を推進する太い骨が通っているように思う。テンポ設定や各楽章の表現も全体の構成を考えて取られているように見受けられ、例えば、1楽章終結部で強調していた金管の刻みが、4楽章冒頭を聞いて、なるほどここにつながるのか、と思わされた。

全般にテンポは快速系であるが、その中で大きなフレーズでのたっぷりとした歌い回しを聞かせてくれ、「音楽の喜び」を楽員や聴衆と共有させる力を持つ指揮者だと思う。欲を言えば、表現や音量をあえて抑えることによって、はっとするような美しさを引き出してくれたらもっと良いのに、と思うことはあるが。。。 (つまり、押すだけでなく、引く美しさである。)

コンセルトヘボウは実に上手い。私見では、オケの技術の高さはベルリンフィルがずば抜けているが、コンセルトヘボウはシカゴと並んでベルリンの次に来るだろう。ウィーンフィルよりも技術的には上手い。(ウィーンにはウィーンの良さがあることは言うまでもないが)

ベルリンフィルの管楽器は、音色の美しさ・透明感、音程・リズムの完璧さ、ダイナミクスの幅広さなど、およそこれ以上は考えられないというほど高度なレベルにある。細い糸1本のような極く極く小さい音量でホルン2本が完璧にハモったり、パユとマイヤーが最新鋭戦闘機が宙を舞うかの如く自在で多彩に吹いたりするのを聞くと、「オーケストラというのはこんなにも凄いことができるのか」と唖然とする。「スーパーカー」的な上手さである。

これに対し、コンセルトヘボウは管も弦も音が柔らかく、各楽器の音が良く溶け合っており、聞いていてしみじみと心地よさを感じる、そういう上手さである。ホルン、ファゴット、クラなどの音色は暖かく、伸びと丸みがあり、いつまでも聞いていたいと思ってしまう。フルートは名手エミリー・ベイノンが吹いていたが、今回は見せ場の少ないプログラムで残念であった。

ガッティはロイヤルフィルを振るときには、表現の振幅は大きいけれども、テンポの設定などでは、オケの能力を考えて無理はしていないのではないかと思う。しかし、コンセルトヘボウはガッティのどんな要求にもピタリと反応できる技術を備えており、この日はガッティも思う存分、納得のいく音楽作りができたのだろう。指揮者とオケのコラボレーションの密度の高さが客席にも伝わってきて、充足感のあるコンサートであった。

近頃私が贔屓にしている指揮者は、ガッティ、ヤンソンス、ハイティンク。

濃くて歌心のあるガッティ、知的で構成力のあるヤンソンス、品格があり端正で引き締まった音楽を作るハイティンク(指揮台に立った時のオーラは巨匠と呼ぶに相応しい!)、と3人の持ち味は全く異なるものの、皆、コンセルトヘボウとつながりが深い。良いオケにして良い指揮者あり、むべなるかな。
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by bibinga | 2007-11-30 23:56 |  

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