今日の1本(ポマール・グラン・ゼプノ)
Pommard 1er Grand Clos des Epenots 1998,
Domaine de Courcel
いよいよ25日はクリスマス当日である。
今日は前座、というわけにいかない。最初、クロ・ド・タールを開けようと思った。
クロ・ド・タールは右の写真のように、ラベルに「聖母マリアと幼子イエス」が描かれており、クリスマスにはいい感じだ。
ちなみにクロ・ド・タールの畑は葡萄の木の植え方に特徴がある。ブルゴーニュの畑は通常、斜面に沿って縦に植えられるのだが、クロ・ド・タールでは、珍しく、斜面に対して横向きに植えられている。表土の流出を防ぐから、合理的なのだとか。
余談はさておき、結局、クロ・ド・タールは開けなかったのである。なぜならば、あいにく、手元にはクロ・ド・タールは1本しかなく、ヴィンテージは2001年。この素晴らしいワインを開けるには、今はあまりにも早すぎて勿体ない。タールさまに失礼である。せっかく取り出したのだが、開けようか開けまいか、しばし迷ったあげく、元に戻すことにしたのだった。
その代わりに選んだのが、冒頭の写真にある、ポマール・グラン・ゼプノ'98(クールセル)である。
ポマール村は、コート・ドール(黄金の丘)と呼ばれるブルゴーニュワイン生産地の中心ボーヌのすぐ南に隣接している。ポマール村には2つの有名な畑があり、北のボーヌ側にあるエプノと、南のヴォルネイ側にあるリュジアンである。エプノの方がエレガントで、リュジアンはよりパワフルである。
「ブルゴーニュで次にグランクリュ(特級畑)に昇格するとしたらどの畑か?」とは良く取りざたされる話題であるが、大方コンセンサスとなっているのが、①ジュヴレ・シャンベルタン村のクロ・サン・ジャック、②シャンボール・ミュジニ村のレ・ザムルーズ、③ニュイ・サン・ジョルジュ村のレ・サン・ジョルジュ、④ポマールのレ・リュジアン、であろう。エプノはリュジアンと肩を並べる畑であり、クリスマスのワインとして選んでも、バチは当たるまい。
そしてまた、ポマールには2つの有力なドメーヌ(ワイン生産農家)がある。コント・アルマンとクールセルである。今日のワインは、クールセルのグラン・ゼプノ。
98年のブルゴーニュは、どちらかといえば不良の年、と言われている。しかし、私は98は嫌いではない。同じ不良でも、92や94は痩せていて酸だけが目立ち、ふくらみに欠けるが、98は割りとバランスが良い。そして、なによりも、今、丁度飲み頃に差し掛かっているのである。この1~2年、98のブルゴーニュを何本も飲んだが、どれも非常に美味しく飲めた。99以降のものを若飲みするよりは、98を飲む方が、今飲むなら、ずっと楽しめる。
さて、実際のワインはどうだったか。
おー、しあわせ、である。
丁度、熟成感が出始めた頃、まさに今からが飲み頃という感じである。
色は深い赤。香りもどこまでも深く、鼻をグラスに差し入れて、いつまでも嗅いでいたい。
透明感がある。ブランディのタッチがある。
ポマールはヴォーヌ=ロマネをより強くした感じ、というのが私のイメージであるが、まさにそういう印象である。ヴォーヌ=ロマネのトップの畑に比べると、純度・華やかさ・拡がりの点で一歩譲るが、たくましさでは負けていない。うーん、素晴らしい!
コント・アルマンのグラン・ゼプノ(モノポル-単独所有畑-のクロ・デ・ゼプノ)が柔らかいスタイルであるのに比べて、クールセルのエプノはもっと剛直である。
この畑は、コント・アルマンのクロ・デ・ゼプノ。
クールセルの畑はこの隣にある。
ブルゴーニュはボルドーに比べてわかりにくい、とよく言われるが、つまるところは「畑、造り手、ヴィンテージ」、この3要素であり、それほど複雑ではない。
ワインを買うときに、畑や生産者の情報を頭に入れておくのは、株式投資をするときに会社四季報を読むのと同じ。ほんの少しの興味と熱意で、頭の中にデータベースさえできれば、ブルゴーニュの楽しみはずっと広がる。(現地で実際に畑を見たり、ドメーヌを訪問すれば、なお良し)
ボルドーも、優良なシャトーの深く滑らかな味と言ったら、最高というしか無いものであるが、飲む前から味が想像できてしまう面がある。ブルゴーニュは素朴な家内生産が主流のため、品質にバラつきがあり、どんなに評判の良いワインでも、栓を抜いてみるまではわからない。この、一か八か、みたいな不確実性が、心をくすぐるのである。
たかがワイン、されどワイン。ブルゴーニュはほんとうに素晴らしい!
by bibinga | 2007-12-25 22:30 | 酒