オペラ備忘録(英国ロイヤルオペラ、ネトレプコの椿姫)

d0135403_851364.jpg2008年1月14日(月) ロイヤル・オペラ・ハウス
ヴェルディ 「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」

マウリツィオ・ベニーニ指揮
リチャード・エア(オリジナル)、パトリック・ヤング(リバイバル)演出

英国ロイヤルオペラ
ヴィオレッタ:アンナ・ネトレプコ
アルフレード:ヨナス・カウフマン
ジョルジョ・ジェルモン:ドミトリ・ホロストフスキー


これだけ素晴らしいものを聴いてしまうと、言葉が無い。

ネトレプコが当代きっての人気歌手であることはわかっている。それが評判倒れではないことも、過去に何度か聴いて知っている。だから、当然、期待はしていた。

しかし、まさかこれほどとは! 大きなサプライズであった。 心底魅了されてしまった。

ラ・トラヴィアータは、とにかくヴィオレッタが歌い続けるオペラだ。1幕でいきなりクライマックスとも言えるコロラトゥーラのアリアがあり、その後もリリックに、ドラマティックに、パセティックに、延々と歌い続ける。これをネトレプコで聴けるというのは、最高の幸せである。

彼女の声には、密度がある。稠密で、レーザービームのようにくっきり浮かび上がって、ビシっと届いてくる。フレーズの息が長い。フォルティシモでは圧倒的な声量が出るが、ソットヴォーチェで歌う繊細な表現も実にうまい。表情がある。吸い込まれてしまう魅力がある。

声は、かなり硬く金属質だと思う。強くて硬いけれど、決してキンキンする嫌味な声ではない。オペラハウスで聴いたら、とても美しく聞こえる声だ。倍音がきれいに揃っているのかもしれない。

息遣いが非常に柔軟。立ち居振る舞いも歌も、全てが魅力的である。ぐわしっと、心を掴まれてしまう。惚れてしまう。

深みがもう一つ? ヴィオレッタにしては強すぎるし、直線的? 確かにそういう面はあるだろう。でも、どうでもいいじゃないか、そんなこと。彼女はまだ若い。歌うのが、そして自分を表現するのが楽しくてしかたがない、そういう生のままの彼女でいいのだ。今のオペラ界に、彼女ほどオペラの楽しさを味わわせてくれる歌手はいまい。年輪を重ねるに連れて、芸風は自然に変わってくるだろう。今は、「今の彼女の」持ち味を、素直に受け止めて楽しめば良いのである。

ヨナス・カウフマンも良かった。1幕は硬直的で声が伸びず本調子ではなかったように思うが、2幕は素晴らしかった。彼は声量を出そうとすると硬くなるようだが、mf~fで歌っているときは実に良い。しなやかで、表情がある。役柄をきっちり捕まえていて、安定しており、とても良かった。

ホロストフキーは良く声が出ていたし、伸びていたが、惜しむらくは、声を押しがちで、直線的で平板。もう少し柔軟性が欲しい。

オケは細かいところがかなり雑だったが、初日でまだ探り合うところがあったのだろう。ベニーニの指揮ぶりは、この曲を完全に掌中に収めており、ところどころでオケはすごく良い音を出していた。これから回を重ねるごとに良くなるに違いない。

今日のオペラのキーワードは「ネトレプコ」。ネトレプコは高い期待をさらに上回る素晴らしい歌唱で聴衆を魅了した。でも、彼女だけでなく、カウフマンもホロストフスキーも立派だった。今日のラ・トラヴィアータは、日本から飛行機に乗ってでも、聴きに来る価値があっただろう。文句なしに★★★(3つが最高)。年が開けてから2度目のオペラであるが、新年早々、このような素晴らしい舞台を堪能できて、幸せである。23日にもう一度、観に行く。
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by bibinga | 2008-01-14 23:33 |  

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