オペラ備忘録(英国ロイヤルオペラ、魔笛)

ロイヤル・オペラ・ハウス
モーツァルト 「魔笛」
指揮:ロランド・ベール(Roland Böer)
演出:オリジナル/デイヴィド・マクヴィカー(David McVicar)
    リバイバル/リー・ブレイクリー(Lee Blakeley)


d0135403_8342374.jpg2008年1月31日(木) 
タミーノ:クリストフ・シュトレール(Christoph Strehl)
パパゲーノ:サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)
夜の女王:エリカ・ミクローザ(Erika Miklósa)
パミーナ:ゲニア・キューマイアー(Genia Kühmeier)
弁者:トマス・アレン(Thomas Allen)
ザラストロ:スティーヴン・ミリング(Stephen Milling)
パパゲーナ:Kishani Jayasinghe


d0135403_8344979.jpg2008年2月7日(木) 
タミーノ:パヴォル・ブレスリク(Pavol Breslik)
パパゲーノ:クリストファー・モルトマン(Christopher Maltman)
夜の女王:アンナ=クリスティーナ・カポーラ(Anna-Kristiina Kaappola)
パミーナ:ケイト・ロイヤル(kate Royal)
弁者:ロバート・ロイド(Robert Lloyd)
ザラストロ:ハンス=ペーター・ケーニッヒ(Hans-Peter Konig)
パパゲーナ:Kishani Jayasinghe


魔笛の公演をAキャスト、Bキャストで観た。これまでも同じ演目を異なるキャストで見比べたことは何度かあるが、今回の魔笛ほどキャストによる違いがはっきりでたのは珍しい。

歌そのものの力量は、明らかにAキャストが上であった。特にキーンリーサイド(パパゲーノ)、キューマイヤー(パミーナ)が素晴らしく、ミクローザ(夜の女王)がハイFをいともたやすく出したのには舌を巻いた。Aキャスト公演は、テンポが小気味良く、歌手の声の質も軽く、非常に軽快なモーツァルトであった。こういうのは個人的には嫌いではない。

ミクローザ(夜の女王)の声はとてもきれいで、完璧なコロラトゥーラを聴かせてくれたが、情念はあまり感じられなかった。娘を攫われた母の悲しみが伝わってこず、ザラストロとの敵対関係だけが強調されていたように感じた。トマス・アレン(弁者)、スティーヴン・ミリング(ザラストロ)とも、これらの役にしては声が明るく、音域も高い。トマス・アレンは一番低い音が出ていなかった。

シュトレール(タミーノ)、キューマイヤー(パミーナ)は両者とも素直な声が良く伸びて、軽快で明るめの全体の雰囲気に良くマッチしていた。キーンリーサイド(パパゲーノ)はコミカルな演技力で観衆を魅了。そのあまりの声の良さが、逆にパパゲーノのキャラクターにはミスマッチとも思えるほどであった。Kishani Jayasinghe(パパゲーナ)は声量はそれほど大きくないが、声の質が美しく良く通る声で非常に好感を持った。


一方、Bキャストは、Aキャストが軽快で乗りのよい歌手が揃っていたのとは対照的に、ややごつごつして不器用な歌手たちだった。特にモルトマンやケイト・ロイヤルは、さくさくと歌うよりも、じっくり歌う方が持ち味が活きるような気がする。実際、Bキャストでは、歌手が指揮者の早いテンポに抵抗し、少しずつ引っ張って歌っていた。1幕は今一つ調子の上がらない歌手が多かったが、2幕は皆乗ってきて、演技にも熱がこもり、見ごたえのある仕上がりだった。

特筆すべきは、ハンス=ペーター・ケーニッヒ(ザラストロ)。Aキャストのミリングはザラストロにしては明るすぎたが、ケーニッヒは「これぞザラさま」という堂々たる声を聴かせてくれた。これにはちょっと痺れた。これがBキャストのピカイチ。あとは、Aキャスト比では3人の童子が良かった。(Aキャストの童子はかなりいただけなかった)

声が美しく軽快なAキャスト、情感あふれる歌唱と演技で見ごたえのあったBキャスト、この違いを面白く観た。演出は思わせぶりなところがなく、宗教色も薄くてさっぱりしていた。パパゲーノに存在感があった。

魔笛は、自分自身、オーケストラの一員として上演に参加したことがあり、思い入れの深いオペラである。何よりも音楽が本当に美しい。歌自体はさほど高度な技術の無い歌手でも歌えるからなのか、あるいは派手なアリアが少ないからなのか、キャストに恵まれない公演が多いような気がするが、今回のロイヤルオペラは、A・Bとも歌手陣が充実していたと思う。やはり美しい音楽を良い歌手で聴けるに越したことは無い。

シュトゥットガルトで観たコンヴィチュニー演出、チューリヒで観たクシェイ演出に比べると、ごくごくオーソドックスな魔笛であったが、歌手の良さもあり、A・Bとも満足できた公演であった。

※ Aキャストについて、dognorahさんが充実した記事をお書きになっていらっしゃいますので、ご覧ください。(観た公演日は違いますが、私もdognorahさんのAキャスト評にほぼ同感です)
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by bibinga | 2008-02-14 23:59 |  

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