2008年 今年聴いたコンサート・オペラ(日本編)

4~12月分。11月中旬以降、感想をアップしそびれていた分を、まとめて書いておく。

4月 2日(水)  Piano 4 hands (大倉山記念館)
5月 8日(木) 加納裕生野(P) (杉並公会堂/小)
6月19日(木) 平井丈一朗(Vc) 平井元喜(P) (津田ホール)
6月28日(土) 高橋節子(S) 丸山滋(P)
7月 3日(木) 松本あすか(P) (王子ホール)
7月15日(火) 中村純子(P) 柿沼麗子(Vn) (文京シビック/小)
9月22日(月) デュメイ(Vn)、小山実稚恵(P)
10月15日(水) ローザンヌ歌劇場 ビゼー「カルメン」 
10月21日(火) レイフ・オヴェ・アンスネス(P)
10月27日(月) ウィーン国立歌劇場 モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」 
10月31日(金) ウィーン国立歌劇場 ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」(演奏会形式)
11月 6日(木) 柿沼麗子(Vn) ユエ・シェン(P) (めぐろバーシモン/小)
11月11日(火) エヴァ・メイ(S)、シラクーザ(T)

d0135403_0531796.jpg11月14日(金) 工藤重典(Fl) 成田有花(P,Cemb)
(東京文化会館/小)
クープラン 王のためのコンセール第4番より
ルクレール フルートソナタホ短調0p.2-1
サン=サーンス ロマンス変ニ長調Op.37
ジュナン ヴェニスの謝肉祭Op.14
フォーレ 幻想曲Op.79
ドビュッシー パンの笛
ラヴェル ハバネラ風の小品
イベール フルート協奏曲より第2楽章
ジョリヴェ 5つの呪文より第4曲
プーランク フルートソナタ

工藤さんのフルート演奏は、香りと人間味があって、大好きである。音は金の楽器の硬質感がありながらもどこか暖かい。プーランクのソナタは、工藤さんご自身が、作曲家の自筆譜や断片的スケッチに基づいて初期の姿を復元した版で演奏された。通常演奏される版と大きく異なる箇所が、私に判別できただけでも1・3楽章では10箇所以上、2楽章は5~6箇所くらいあり、興味深く聴いた。(例えば、ピアノが旋律を弾くところで、フルートが和音の一音を伸ばしている、というような違い)

11月24日(月) アトナリテ・クール (淀橋教会)
バロック・ヴァイオリンの第一人者、赤津眞言さん(クイケン率いる「ラ・プティット・バンド」のメンバーでもある)が指導されている合唱団。コンサートでは赤津さん自ら演奏を受け持たれていた。

11月26日(水) クリスティアン・ツィメルマン(P) チョン・ミョンフン指揮
東京フィルハーモニー

(東京文化会館)
メシアン   ほほえみ
ルトスワフスキ  ピアノ協奏曲
チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

ツィメルマンのピアノは、ロンドンでリサイタルを聴いて、その独特の響きに感心したものだが、この日も確かに同じような音がしていた。彼の音は、不思議な音だ。透明だけど倍音が豊か、という感じ。ステージまで距離があって定かではないのだが、ピアノの上蓋に黒い紙(らしきもの)が張ってあったように見えた。ツィメルマンは自分でピアノをいじるらしいが、あの紙も何かの効果があるのだろうか?
チョン・ミョンフンのドライブ力は本当に凄い。悲愴では、東フィルは集中力の高い「火の出るような」熱演。指揮者の指示だろう、場面の移り変わりで、空気を替えるような音色の処理が見事だった。

d0135403_1225337.jpg12月 2日(火) イエルク・デムス(P)
(東京文化会館/小)
バッハ 半音階的幻想曲とフーガニ短調BWV903
モーツァルト 幻想曲ハ短調K475
ベートーヴェン ピアノソナタ第32番ハ短調Op.111
シューマン 子供の情景
シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調D960


イエルク・デムスと言えば、フリードリッヒ・グルダ、パウル・バドゥラ=スコダと並び「ウィーン三羽烏」と呼ばれたオーストリアの名ピアニストである。そのデムスの80歳記念コンサートがあると言うのでは、足を運ばないわけにはいかない。

プログラムは、「ど真ん中の直球」。こんな重い曲ばかり、よくも揃えたものだ。完全に自分のものになっているという自信の表れであろう。

デムスのピアノは、アンスネスやツィメルマンと比べると、古めかしいスタイルと言わざるを得ない。音色の変化はあまり無く、ダイナミクスやテンポでの味付けで勝負、という感じだ。しかし、それは決してネガティブな意味を持つものではなく、むしろ、ドイツ・オーストリア圏の作品はこういう音で弾くものだ、という正統の流儀なのだろう。

シューベルトの最後のソナタは愛好する曲の一つで、いろいろなピアニストの演奏を聴いてきたが、この日のデムスの演奏は極めつけと言ってよい。特にテンポ。「そう、このテンポなんだよ」と思う。

彼の演奏を聴いていて、ベートーヴェンやシューベルトの眠るウィーン中央墓地や、北の森のベートーヴェンの散歩道、ハイリゲンシュタットの遺書の家などの風景が脳裏に蘇ってきた。この演奏家は、作曲家が暮らしていた同じ土地で、時代は違っても、同じ光景を見、同じ言葉をしゃべり、同じ空気を感じて育ってきたのだなぁ、と感じた次第。

d0135403_1562994.jpg12月 5日(金) 藤原由紀乃(P)
(東京文化会館/小)
バッハ 半音階的幻想曲とフーガニ短調BWV903
ベートーヴェン ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」
ブラームス パガニーニの主題による変奏曲イ短調


藤原さんは、「ベアタ・ツィーグラーの『魂の耳で聴き、奏でる』自然なピアノ奏法」という独特な弾き方をされるとのことで、一度、聴いてみたいと思っていた。この日のプログラムは、当初レーガーとラフマニノフが予定されていたが、急遽曲目が変更になった。

藤原さんのピアノは、丸い響きがする。テンポもダイナミクスも、見事にコントロールされていて、曲の構成が見えるような演奏だ。ただ、私には、躍動感が不足しているように感じられ、変化をつけて弾いているにもかかわらず、幾分平板に聞こえてしまう。たぶん、これは波長の合う/合わないの問題なのだろうと思う。あと20年くらい歳をとってから聴いたら、心のツボにはまるのかもしれない。

12月 8日(月) アレクセイ・ヴォロディン(P) ゲルギエフ指揮 ロンドン交響楽団
(東京文化会館)
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番ニ短調
プロコフィエフ バレエ「ロメオとジュリエット」第1・第2組曲より


ロンドンで数え切れないほど聴いたLSO。東京で聴いても、LSOはやっぱりLSOの音がした。このオケは、アンサンブルはちょっと雑だし、音色が暗いが、とにかく骨太のゴツい音が出せる。

11月のチョン・ミョンフン&東フィルも良かったが、LSOと比べてしまうと、日本のオケはいかにも「ひ弱」だ。日本人は合奏能力はとても高く、音も澄んでいてきれいだが、「刺身」の音。過去4年間、欧州のオケを聴き慣れた耳には、どこか物足りない。

これは体格のハンディキャップなのではないか、という気がする。西洋人の頑丈で大きな体と、その体に共鳴させる音の出し方、ここが日本人にはなかなか真似ができないのではないかと思うのだ。

もちろん、音楽に「正解」というものは無く、日本人は日本人なりのアプローチで音楽をすれば良いのであるが、ここのところって、結構キモなんじゃないか。体に響かせられない音は、何となく上滑りして、芯をつかまえきれない。線の細い音は、聴いていて疲れる。感覚的な物言いで、叱られてしまうかもしれないが・・・。

アンコールに「3つのオレンジへの恋」のマーチ。これがまた、「超弩級」と言うに相応しい迫力。参りました。

フルートは前半のラフマニノフはBBC交響楽団首席のマイケル・コックスが吹いていたが、後半引っ込んでしまって残念。LSOのフルート人材難はまだ続いているようだ。
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by bibinga | 2008-12-31 23:16 |  

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