庄司紗矢香 個展

ヴァイオリニスト庄司紗矢香さんの油彩画の個展が、京橋の画廊プンクトゥムで開かれている。

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こちら(→プンクトゥムHP)に紹介されているとおり、彼女は楽曲を演奏していると、頭に情景が浮かんでくるのだという。その絵は、余技というにはあまりにも見事であり、イマジネーションの豊かさのみならず、技術的にも極めて確かであるように見受けられる。母親が画家、と聞いてなるほど合点がいく。

展示されている絵は9点ある。
 ① エチュード
 ② 9度の歯車(ブロッホ:ソナタ1番2楽章冒頭)
 ③ ある天使の思い出に(ベルク:協奏曲冒頭)
 ④ 風(リゲティ:協奏曲3楽章冒頭)
 ⑤ ピランデッロ通り
 ⑥ プロコフィエフ:ソナタ2番4楽章
 ⑦ 遠くから(ブロッホ:ソナタ1番2楽章"Lontano")
 ⑧ 中世の手(リゲティ:協奏曲2楽章)
 ⑨ マンゴー

6点については、タイトルに着想の元となった音楽が示され、CDで音楽を聴くことができるようになっている。

絵のスタイルは、写実的なもの、幻想的なもの、抽象的なものなど、それぞれに異なっているが、絵の醸し出す雰囲気はどこか共通しており、確固たる個性を感じさせる。

目玉は、一番の大作であり、宣伝にも使われている「プロコフィエフ:ソナタ2番4楽章」であろう。
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ヘッドフォンを耳に当てると、ソナタが聞こえてくる。演奏は庄司さん自身のようだ。4楽章の冒頭ではなく、途中のほんの数十秒の一節だけが、繰り返し流れてくる。着想を得たのはこの部分だ、と言いたいのだろう。その一節とは、ここである(注:この情報は、画廊で聴いた人にしかわからず、新聞記事や他のブログには載っていないので、貴重ですぜ!)。
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プロコのヴァイオリンソナタ2番は、元はフルートソナタとして作曲され、作曲者自身がヴァイオリン用に焼き直したものである。フルートソナタとしてこの曲に親しんできたせいで感じ方が違うのかもしれないが、私は第4楽章に庄司さんのような暗い色調は感じない。

私の頭に浮かぶのは、「抜けるような青空の中、華麗に空中旋回するプロペラ機」である。空は澄み切っていて、明るい。しかし、良く見るとプロペラ機は爆撃機。遠くでは町が砲撃で炎上している。明るさと恐怖が入り混じった、乾いた諧謔。(例えば、次のフレーズは戦闘機の宙返りに聞こえないだろうか?)
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このような青空のイメージを持っていた私にとって、庄司さんの「暗闇に寄り添う恋人らしき男女」のイメージはしっくりこなかったが、ヘッドフォンをかけて曲を聴きながら絵を眺めると、ピタリとはまる。寄り添う男女の背中からはアゲハチョウの羽が伸び、その羽がやおら動き出すようだ。

ウルトラセブン最終回の、ダン隊員が自分の正体をアンヌ隊員に打ち明ける場面を連想してしまった。きらきら輝く背景にシルエットで浮かぶダンとアンヌ、BGMはシューマン「ピアノ協奏曲」。庄司さんの絵も、きらきらと動くのである。「人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの。たとえウルトラセブンでも。」というアンヌの感動的なセリフを心の中でつぶやく私であった。

プロコ以外の絵では、「遠くから」という絵が好きだ。(画像はプンクトゥムHPから拝借)
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あと、「マンゴ」も、庄司さん独特の画風という点では他の絵とは路線が異なるものの、無造作に平面的に描かれた背景と、妙に存在感のあるマンゴのコントラストが不思議な魅力を持っている。
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「エチュード」、「風」はプンクトゥムHPに載っていないので、ご参考まで。
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個展は6月13日(土)が最終日。ブログのアップが遅くなってしまい、もう最終日だが、もしご都合のつく方がいらっしゃれば、足を運んでみていただきたい。(13~19時、入場無料。東京都中央区京橋1-6-6 ハラダビル2F)
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by bibinga | 2009-06-13 01:39 |  

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