カテゴリ:音( 40 )

 

オペラ備忘録(東京二期会のオテロ)

d0135403_16475624.jpg2010年2月17日(水) 東京文化会館

東京二期会 ヴェルディ 「オテロ」

指揮: ロベルト・リッツィ=ブリニョーリ
演出: 白井 晃

 オテロ 福井 敬
 デズデモナ 大山亜紀子
 イアーゴ 大島幾雄
 エミーリア 金子美香
 カッシオ 小原啓楼
 ロデリーゴ 松村英行
 ロドヴィーコ 小鉄和広
 モンターノ 村林徹也
 伝令 須山智文
 合唱: 二期会合唱団
 管弦楽: 東京都交響楽団

東京二期会は、このところ蝶々夫人、カプリッチョ(R.シュトラウス)と観て、その実力を高く買っている。このオテロは、その2作の出来をも上回る、非常にレベルの高い演奏だったと思う。

オテロの福井さん、デズデモナの大山さん、イアーゴの大島さん、この3人が場に放射するエネルギーは強烈で、まさに役柄に相応しいものであった。歌唱技術が高いことに加え、役の読み解きが深い。3人がそれぞれ個性的でありながら、しっかりかみ合っている。

福井さんと大島さんの役の解釈については広報誌のキャストインタビューに紹介されている。

福井さん:「人間の弱さを強い部分とのコントラストで表現してみたい」
その言葉どおりのオテロ。立派な将軍であり、公正で客観的な判断力を持っているに違いないのに、我が事になると猜疑心の泥沼に落ちてしまう。人間の業の悲しさを思わずにいられなかった。

大島さん:「いかにもな悪人面ではなく、エリートで魅力的なんだけれども、じつは狡猾でいちばん悪い、そんなイアーゴにしたい」
まさしくそのとおりの、徹頭徹尾クールなイアーゴ。

大山さんのデズデモナは純粋さと知性と人格の成熟を感じさせる。声の美しさ、実力者のみが備えることのできる自然な落ち着き、こうした大山さんの素晴らしさが役にピタリと重なり、大変に見事であった。

演出は、ダークグレーを基調にしたモノトーンでシンプルな構成。舞台は奥が高くなっていて3次元の奥行きがあり、この空間の中で人物が位置を変えていく動きがよく練られていたように思う。

リッツィ=ブリニョーリ&都響の演奏にも大変に気合が入っており、冒頭からゾクッと来た。音がブリリアントによく鳴りながら、開放的というよりは引き締まって凝縮されたエネルギーの強さを持っていた。ダイナミックかつドラマティックな名演。

実に満足度高く、東京二期会を引き続き贔屓にしたいと改めて思った。


ノート
d0135403_16472753.jpg・ 今回役に立ったのが、ニコン製のオペラグ
  ラス「遊」。他機種と比較はしていないが、
  相当な「優れ物」である。

  オペラグラスを使うのは煩わしくて好きで
  はなかったが、これを手に入れてからは
  一転、手放せなくなってしまった。オペラ・
  コンサート・歌舞伎、、、いつも持っていく。

  視界は明るく鮮明で、スコーンと抜ける。小さく、軽く、持ちやすい。

  倍率は4倍とそれほど高くないが、オペラや歌舞伎を見るには丁度よい。逆に、これ以上高倍率
  だと像がブレやすく、見づらくなるだろう。

  観劇の喜びが倍増すること、請け合いである。(カンゲキ!なんちゃって・・・)
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by bibinga | 2010-02-18 22:41 |  

コンサート備忘録(アンナ・ヴィニツカヤ)

d0135403_1024144.jpg2010年2月10日(水) 日経ホール

アンナ・ヴィニツカヤ ピアノリサイタル

J.S.バッハ   パルティータ第6番ホ短調BWV830
ラヴェル    ソナチネ
ムソルグスキー 展覧会の絵

(アンコール)ドビュッシー 映像第1集~第3曲「動き」


エリザベート王妃優勝の名に恥じない、将来性を感じさせるピアニスト。

最初のバッハはいただけなかった。きっちり弾いているが、何をやりたいのか伝わってこない。特にサラバンドのような緩徐曲で音楽が持たない。両隣の(見知らぬ)おじさん達は爆睡していた。

ラヴェルは一転、素晴らしい演奏。躍動感に満ち、きらめき・輝きがあり、そして香りと軽さ。非の打ち所のない名演。(おじさん達も真剣に聴いていた)

展覧会は、ラヴェルをさらに上回った。考え抜かれたダイナミクス、表情の変化、長いフレーズ感でのエネルギーの持続、大きなうねり、圧倒的な迫力。確信に満ちた演奏であり、本当に凄かった。

この曲は、ピアノリサイタルではあまり取り上げられないような気がする。直近で聴いたのは、4年ほど前。期待の若手と言われる某日本人ピアニストがウィグモアホールで弾いた。その時との比較でも、ヴィニツカヤさんのがっしり曲を捉えきった演奏は圧倒的だと思った。

アンコールはドビュッシー。ラヴェル同様、活き活きとして、明快かつ繊細で、素晴らしかった。

このピアニストは、ラヴェルやドビュッシーが好きなのではないか。これらの曲を弾いている時の姿は、本当に嬉しそうで、輝いている。そして演奏の完成度も極めて高かった。

しかし、どういうわけか、聴いての感動は、展覧会に及ばない。なぜだろう?

Just印象であるが、ラヴェル、ドビュッシーは、曲に演奏者が吸い寄せられていた。対して展覧会では、演奏者が曲を自分の方にぐいとひきつけていた。「曲は作曲者のもの、演奏は演奏者のもの」、そんなことを考えさせられた演奏会だった。

ビル建替で新装なった日経ホールに足を運ぶのは2度目であるが、オフィスビルの中のホールにしては音響は悪くない。王子ホールを一回り大きくしたようなホールで、ややデッドではあるが、空間にゆとりがあり、圧迫感が無い。日経主催公演は値段も3500円と安く、この値段でこれだけ良質のコンサートを楽しめれば御の字である。
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by bibinga | 2010-02-10 23:59 |  

高木綾子さんのコンサート

2010年2月8日(月)

気鋭のフルート奏者高木綾子さんの無料コンサートが日本橋のビルで開催された。

日本の中堅世代で素晴らしいと思うフルート奏者が2人いる。一人は藤井香織さんで、もう一人が高木綾子さんである。

藤井さんは金のフルートを吹き、すがすがしく輝かしい音色。かたや高木さんは銀のフルートを吹き、太く朗々と鳴る音、そして温もりのある音楽を目指しているようである。

藤井さんのフルートは生で何度も聴いており、その度に感銘を受けてきた(機会さえあれば、いつでも聴きたいと思うフルート奏者である)。また、録音も、バッハ「無伴奏チェロ組曲」、B.スターク編曲バッハ「アリア」、ベルリンフィル首席オーボエのアルブレヒト・マイヤーとの二重奏「パッション・フライト」、モリコーネの映画音楽集「ロマンツェ・ディ・モリコーネ」など、いずれも本当に素晴らしい。特に、無伴奏チェロ組曲の第1集と「アリア」は、私の愛してやまない「心の名盤」となっている。

一方、高木さんについては、CDは何枚も持っているが、これまで生で聴いたことは一度も無かった。今日は、日本橋三井タワーのアトリウムで無料コンサートがあるというので、絶好のチャンスと思い、会社を18時過ぎに切り上げて聴いてきた。

曲目は、
  ドビュッシー シリンクス
  ライネッケ  ソナタ「ウンディーヌ」から第1,3,4楽章
  ピアソラ   「タンゴの歴史」から第1~3曲
  ショッカー  「後悔と決意」
  アンコール: 村松崇継 「アース」

ショッカーとアンコール以外は、自分でもトライしている良く知った曲であり、それだけに、演奏の素晴らしさが身に染みて感じられた。

生で聴いて、高木さんの音色の美しさに感じ入った。CDからは少し地味めの印象を受けていたが、今日聴いた彼女の音は、低音は太く暖かく、中音は張りがあり、高音は輝かしく(しかし尖らず)、大変に美しく魅力的な音色である。

今まで、ゴールドの楽器が欲しいなぁ、と思っていたが、今日の高木さんの音を聴いて、銀の楽器の良さを見直した。(道具を変える前に、まだまだ努力すべきことが多いわけね・・・)

フレーズの捉え方、ダイナミクス、息の使い方で描き分けるニュアンスなどに非凡なセンスが感じられ、随所に発見があった。例えば、ライネッケ3楽章後半の速いパッセージ→羽毛のように軽い表現。ピアソラの第1曲→警官の呼子の表現。etc,etc・・・

それにしても、今日の聴衆は偶然集まったものとは思えない。高木さんのファンの方々はじめ、笛吹きが狙ってやって来た節がある。パイプ椅子はざっと100席分くらいだっただろうか。椅子席には到底おさまらず、多勢が、立ったまま1時間のコンサートに聴き入っていた。オープンスペースでのコンサートらしからぬ張り詰めた場の緊張感、そしてそれに負けない気合の入った演奏であった。

惜しむらくは、「放し飼い」にされた幼い女の子が演奏者のすぐ目の前まで出て行き、あくびをしたり、後ろを振り返ったり、およそ落ち着きの無い態度で場の雰囲気を霍乱していた。しかし、高木さんの集中力にはいささかの乱れもなく、平然と演奏していた。うーむ、立派である。

日本のトップクラスのフルート奏者の実力を目のあたりにした演奏であった。今度はコンサートホールに聴きに行こう。
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by bibinga | 2010-02-08 23:47 |  

2009年・今年聴いたコンサート(器楽・室内楽編)

【ピアノ】
2月18日(水)  ラファウ・ブレハッチ (東京文化会館)
         モーツァルト  ピアノソナタ第16番変ロ長調 K.570
         ベートーヴェン ピアノソナタ第2番イ長調 Op.2-2
         ショパン     4つのマズルカ Op.17
         ショパン     ポロネーズ第6番変イ長調 Op.53 「英雄」
         シマノフスキ  ピアノのための変奏曲変ロ長調 Op.3

       随所にきらめきはあったものの、全体を貫く骨格のようなものがなく、散漫な印象。
       ツィメルマンの弾き方そっくりの箇所があったり、テンポをいじってみたり、いろいろ
       やろうとしているようだが局所的にとどまっていて、ぐわっと鷲づかみにする迫力に
       欠ける。その中で、シマノフスキは説得力があった。モーツァルトも外連味のなさが
       プラスに働いた好演だったと思う。

4月22日(水)  アブデル・ラーマン・エル=バシャ (東京文化会館・小ホール)
         ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
         ベートーヴェン ピアノソナタ第21番ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
         ラヴェル     高雅で感傷的なワルツ
         ラフマニノフ   ショパンの主題による変想曲Op.22
         (アンコール エル・バシャ 「メスト」、メンデルスゾーン/ラフマニノフ編 「夏の夜
         の夢」よりスケルツォ)

       テクニック抜群。どんなに難しそうなパッセージでも事もなげに弾いてみせ、鮮烈。
       ただ、その先、心に食い込んでこない(当方の体調のせいだったかもしれない)。
       音がバランバランと響く感じ。

       ベートーヴェンはかっちりと弾きながらも空間的な広がりがあり、良い演奏だとは
       思うものの、月光はアンスネスの名演が耳に残っており、それと比べると平凡に
       感じてしまう。ワルトシュタインは聴き応えがあった。ラヴェルが一番良かったよう
       に思う。いずれにしても、物凄い割には感動が伴わず、不完全燃焼の味気なさが
       残ってしまった。

6月 9日(火)  藤井一興 (東京文化会館・小ホール) ★★★
         メシアン 「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」

       入魂の演奏!感銘を受けた。

       唯一残念だったのは、譜めくりの人を置かず、自分で楽譜をめくったため、ページ
       の変わり目で演奏にわずかな隙が生じた箇所があったことだ。特に第6曲、第14
       曲はちょいと無理があったのでは。さすがに(譜めくりしながら弾いたらとんでもな
       いことになりそうな)第10曲と第15曲は、完全に暗譜で弾いていた。

10月 2日(金) パウル・バドゥラ=スコダ (東京文化会館) ★
         ハイドン     「皇帝讃歌」による変奏曲
         ハイドン     ピアノソナタハ短調 Hob.XVI-20
         ベートーヴェン ピアノソナタ第32番ハ短調 Op1.11
         マルタン     フラメンコのリズムによる幻想曲
         シューベルト  4つの即興曲 D899 Op.90
         (アンコール シューベルト 即興曲D935から、シューベルト ラークワルツ、
         Jシュトラウス ピチカートポルカ)

       御年82歳の大御所。昨年は、イエルク・デムスの80歳記念コンサートを聴いたが、
       この2人の老巨匠はどちらもシューベルトが抜群に素晴らしい! もちろん、ベート
       -ヴェンもいいのだけれど。思いどおりに弾けないもどかしさもあるのだろうが、体
       に染み付いた音楽の強さとでも言うのだろうか、参りました、の一言。


【フルート】
6月23日(火) ギュンター・フォーグルマイヤー(Fl)、シュテファン・メンドル(P)
          (東京文化会館・小ホール) ★
         マルティヌー  ファーストソナタ
         ライネッケ    ソナタ「ウンディーネ」
         デュティユー  ソナチネ
         ユー       ファンタジー
         メシアン     黒つぐみ
         マルタン     バラード
        (アンコール ボルヌ「カルメン幻想曲」ハバネラ以降、クライスラー「愛の悲しみ」)

       フォーグルマイヤー氏はウィーン・フィルのフルート奏者。一音たりともおろそかに
       しない、非常によくコントロールされた見事な演奏。派手さはないが、響きの美しさ
       を追求し、徹底的に磨きこんだ精緻な演奏だ。

       マルティヌーやライネッケは、自分もちょろっと手を出しているが、天と地ほども次元
       のかけ離れたこういう優れた演奏を聴いてしまうと、ざばざば吹き流している我が身
       が恥ずかしく、音楽における表現とは何かを、改めて考えさせられた。

【チェロ】
10月30日(金) オレグ・ブガーエフ(Vc)、アリス=紗良・オット(P) (日経ホール) ピアノのみ★
         バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007
         バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 BWV1009
         ラフマニノフ ヴォカリーズ
         ラフマニノフ チェロソナタト短調 Op.19
         (アンコール ラフマニノフ チェロソナタの第3楽章)

       ラフマニノフはつややかな音で切々と歌い、素晴らしかったが、バッハは安定せず。

       バッハの無伴奏は、ブルネロ、ヨーヨー・マ、マイスキー、ウィスペルウェイなど、随
       分と大勢の演奏を聴いてきたが、名の通ったチェリストでもこの曲を名演と言える
       レベルで聴けることはあまり無い。自分が聴いた中では、ペレーニの演奏が、真に 
       素晴らしいと思った唯一の演奏である。聳え立つ名曲にして難曲だ。

       ピアノのアリス=紗良・オットは、ドイツ・グラモフォンからCDが何枚かリリースされ
       ている売り出し中の若手。ありがちな「ビジュアル先行」かと思っていたが、実際に
       聴いてみて、それは大いなる誤解であることがわかった。芯のしっかりした強靭な
       音を出し、フレーズを捉える感覚もとても優れているように思える。単に上手いだけ 
       ではなく、聴衆を惹きつける何かを持っている。伴奏ではなく、リサイタルで聴いて
       みたいピアニストだ。
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by bibinga | 2009-12-29 23:06 |  

2009年・今年聴いたコンサート(オーケストラ編)

今年は、あまり聴いていないが、一応。

4月30日(木) ファビオ・ルイジ指揮 ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(東京文化会館) ★★
        R.シュトラウス 「ドン・ファン」
        R.シュトラウス 「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
        ブラームス   交響曲第4番
        (アンコール ウェーバー 「オベロン」序曲)

       このオケを聴くのは5回めであるが、聴く度に音色が明るくなってきているような気が
       する。かつて「いぶし銀」と言われていたのはどこへやら、今やモダンで豊かな響きを
       持つインターナショナルなオケの音がする。

       その中で個性が光っていたのは、フルートのエッカルト・ハウプト氏。このオケの顔
       と言うべき名手である。彼の音は実に味わい深い。音量は決して大きくない(むしろ
       オケプレーヤーの中では小さい方?)のに、遠くまで見事に通ってくる。歌い回しは
       心の内を吐露するかのようなハウプト節。ブラ4・第4楽章のソロは職人芸の極地と
       言える見事さで、聴き惚れてしまった。
     
7月 8日(水) ミハイル・プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団(東京文化会館)
        リムスキー・コルサコフ 「雪娘」から
        チャイコフスキー     ヴァイオリン協奏曲(Vn 川久保賜紀)
        ベートーヴェン       交響曲第3番
        (アンコール クライスラー 「スケルツォ」(川久保))

       プレトニョフの指揮については以前も書いているが、この人はいじりすぎて曲の流れ
       を壊しているように思えてならない。今回のエロイカもそうであった。私なんぞよりも、
       プレトニョフの方が音楽のプロフェッショナルとして、はるかに考え抜いているのであ
       ろうから、素人があれこれ論評するのはおこがましいが、、、どうにも賛同しかねる。

10月27日(火) パーヴォ・ヤルヴィ指揮 シンシナティ管弦楽団(東京文化会館) ★
        バーンスタイン 「ディヴェルティメント」
        ガーシュウィン 「ラプソディ・イン・ブルー」 (P クリスティアン・ツィメルマン)
        ラフマニノフ   交響曲第2番
        (アンコール シベリウス「悲しきワルツ」、ブラームス「ハンガリー舞曲第6番」)

       アメリカらしいブリリアントなサウンドを堪能。ガーシュウィンの冒頭、クラリネットソロ
       の上手いこと! アンサンブルが精緻で、キビキビした小気味良い演奏。

11月 9日(月) トゥガン・ソヒエフ指揮 トゥールーズ・キャピトル交響楽団(東京文化会館)
         ★★★
        グリンカ       「ルスランとリュドミーラ」序曲
        チャイコフスキー  ヴァイオリン協奏曲(Vn 諏訪内晶子)
        チャイコフスキー  交響曲第5番
       (アンコール バッハ 無伴奏Vnソナタ第2番アンダンテ(諏訪内)、チャイコフスキー 
       「くるみ割り人形」からトレパーク、エルガー「愛のあいさつ」、ビゼー「カルメン」前奏曲)

       いち押し! ソヒエフ凄い! 

       ソヒエフという指揮者が居ることを知らず、トゥールーズ・キャピトル管というオケも知ら
       ず、まったくのノーマークで聴いたが、あまりにも素晴らしくてびっくり。オケというより、
       ソヒエフが凄いと思う。オケから「音色」や曲の「表情」を引き出せる指揮者だ。

       イマジネーション力が並外れていて、かつ、それを具現化するためにオケにどのように
       弾かせればいいのか、その術を会得しているのだろう。

       チャイ5は耳タコの曲だが、この曲をこんなに斬新な響きで演奏できるとは驚きである。
       ロシアの森が鳴る。大地がざわめく。

       おそるべし、ソヒエフ。この人、ラトルの次のベルリン・フィル常任になるかも?と思う
       ほど凄い(ラトルは2018年まで続投が決まったが)。注目していきたい

       久しぶりに聴いた諏訪内さんはとても上手で美しい音だった。楽器が良く鳴って、スケ
       ール感のある演奏。四隅が微妙に収まりきっていない感じを受けたが、これは日本人
       のアプローチとして意図的になされたことだったのかもしれない。
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by bibinga | 2009-12-28 23:19 |  

コンサート備忘録(ラフマニノフ「晩祷」)

d0135403_054201.jpg2009年10月23日(金) 19時
東京カテドラル 聖マリア大聖堂

河地良智指揮
東京トロイカ合唱団

ラフマニノフ「晩祷」



ラフマニノフが作曲した無伴奏の合唱曲。滅多に演奏されない名曲、とのことで興味を惹かれ、聴きに行った。

プログラムによれば、この曲はロシア正教の典礼曲であり、大きな祝日や主日の前夜に夜を徹して行われる礼拝のために書かれ、全15曲からなる。

1915年に完成したラフマニノフ中期の傑作であるが、ソビエト政府の宗教弾圧のために存在が葬られ、長らく日の目を見なかったという。


私は、ロシア正教の何たるかを知らず、その教会音楽も知らず、この曲について語れる素地を持たないが、「感銘を受けた」とだけは書いておこう。ただし、それは、音楽だけの力ではなく、「場」の力もあったのだと思う。

東京カテドラル聖マリア大聖堂は、見事な造形の建築物である。丹下健三氏の設計により1964年に落成したこの建物は、上空から見ると十字架の形をしている。内部はコンクリート打ちっぱなしの大空間になっており、正面は、上方の天井に向かって両横の壁が曲線を描いて伸び、大きな三角形を形成している。巨大な岩窟を思わせ、静謐でありながら威厳がある。

ここにいるだけで、既に心は「場」の力に支配されてしまっている。心が支配されるのは、恐ろしいことだ。信じたことは、その人間にとって唯一の真実となり、世界を閉じる。

自分は天邪鬼な人間であり、かなり懐疑的な性格だ。それは、支配されるのが嫌だ、ということなのかもしれない。「目標に向かって突き進む」のも、好きではない。単に怠惰なだけ、ということもあるが、何かそこに「物を見えなくする」要素が入っているように感じ、距離をおいてしまう。

合唱団の演奏は技術的な問題を超え、感動的だった。折からの多忙で、終演後、余韻を味わう余裕も無くそそくさと席を立ち、一目散に会社に戻らざるを得なかったのが、なんとも味気なかった。

<付録>
d0135403_0181395.jpgラフマニノフついでに、最近見つけた出色のCDを。

スティーヴン・オズボーン
ラフマニノフ 24の前奏曲

- 前奏曲嬰ハ短調op3-2
- 10の前奏曲 op23
- 13の前奏曲 op32

オズボーンは注目しているピアニストの一人である。過去、実演を聴いたときの備忘録はココ

この人は、およそ耽溺するということをせず、冷静なアプローチであるが、曲を捉える感性が抜群に鋭い。このCD、強くお薦めする。
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by bibinga | 2009-10-24 23:55 |  

庄司紗矢香 個展

ヴァイオリニスト庄司紗矢香さんの油彩画の個展が、京橋の画廊プンクトゥムで開かれている。

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こちら(→プンクトゥムHP)に紹介されているとおり、彼女は楽曲を演奏していると、頭に情景が浮かんでくるのだという。その絵は、余技というにはあまりにも見事であり、イマジネーションの豊かさのみならず、技術的にも極めて確かであるように見受けられる。母親が画家、と聞いてなるほど合点がいく。

展示されている絵は9点ある。
 ① エチュード
 ② 9度の歯車(ブロッホ:ソナタ1番2楽章冒頭)
 ③ ある天使の思い出に(ベルク:協奏曲冒頭)
 ④ 風(リゲティ:協奏曲3楽章冒頭)
 ⑤ ピランデッロ通り
 ⑥ プロコフィエフ:ソナタ2番4楽章
 ⑦ 遠くから(ブロッホ:ソナタ1番2楽章"Lontano")
 ⑧ 中世の手(リゲティ:協奏曲2楽章)
 ⑨ マンゴー

6点については、タイトルに着想の元となった音楽が示され、CDで音楽を聴くことができるようになっている。

絵のスタイルは、写実的なもの、幻想的なもの、抽象的なものなど、それぞれに異なっているが、絵の醸し出す雰囲気はどこか共通しており、確固たる個性を感じさせる。

目玉は、一番の大作であり、宣伝にも使われている「プロコフィエフ:ソナタ2番4楽章」であろう。
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ヘッドフォンを耳に当てると、ソナタが聞こえてくる。演奏は庄司さん自身のようだ。4楽章の冒頭ではなく、途中のほんの数十秒の一節だけが、繰り返し流れてくる。着想を得たのはこの部分だ、と言いたいのだろう。その一節とは、ここである(注:この情報は、画廊で聴いた人にしかわからず、新聞記事や他のブログには載っていないので、貴重ですぜ!)。
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プロコのヴァイオリンソナタ2番は、元はフルートソナタとして作曲され、作曲者自身がヴァイオリン用に焼き直したものである。フルートソナタとしてこの曲に親しんできたせいで感じ方が違うのかもしれないが、私は第4楽章に庄司さんのような暗い色調は感じない。

私の頭に浮かぶのは、「抜けるような青空の中、華麗に空中旋回するプロペラ機」である。空は澄み切っていて、明るい。しかし、良く見るとプロペラ機は爆撃機。遠くでは町が砲撃で炎上している。明るさと恐怖が入り混じった、乾いた諧謔。(例えば、次のフレーズは戦闘機の宙返りに聞こえないだろうか?)
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このような青空のイメージを持っていた私にとって、庄司さんの「暗闇に寄り添う恋人らしき男女」のイメージはしっくりこなかったが、ヘッドフォンをかけて曲を聴きながら絵を眺めると、ピタリとはまる。寄り添う男女の背中からはアゲハチョウの羽が伸び、その羽がやおら動き出すようだ。

ウルトラセブン最終回の、ダン隊員が自分の正体をアンヌ隊員に打ち明ける場面を連想してしまった。きらきら輝く背景にシルエットで浮かぶダンとアンヌ、BGMはシューマン「ピアノ協奏曲」。庄司さんの絵も、きらきらと動くのである。「人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの。たとえウルトラセブンでも。」というアンヌの感動的なセリフを心の中でつぶやく私であった。

プロコ以外の絵では、「遠くから」という絵が好きだ。(画像はプンクトゥムHPから拝借)
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あと、「マンゴ」も、庄司さん独特の画風という点では他の絵とは路線が異なるものの、無造作に平面的に描かれた背景と、妙に存在感のあるマンゴのコントラストが不思議な魅力を持っている。
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「エチュード」、「風」はプンクトゥムHPに載っていないので、ご参考まで。
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個展は6月13日(土)が最終日。ブログのアップが遅くなってしまい、もう最終日だが、もしご都合のつく方がいらっしゃれば、足を運んでみていただきたい。(13~19時、入場無料。東京都中央区京橋1-6-6 ハラダビル2F)
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by bibinga | 2009-06-13 01:39 |  

ブルーノ・フォンテーヌ (P) ~心に染みるバッハ

今朝のTV番組「題名のない音楽会」に、ブルーノ・フォンテーヌ氏が出演していたので、彼のCDについて。

J.S.バッハ パルティータ&トッカータ
ブルーノ・フォンテーヌ(P)

TRANSART TR142

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このCDは、ロンドンに居た時に、TRANSART盤を扱う会社の関係の方から戴いたのであるが、一度聴いてすっかり虜になってしまった。以来、繰り返し聴いている。

2004年7月 ランス音楽祭でのライヴ録音。
ライブ収録だと思って耳を澄まして聴くと、ホール全体が息を詰めて彼のピアノに集中しているような気配が感じられる。(→たぶんに先入観に影響されている・・・)

歌が聞こえる。心に染みる。
構造を明確に示しつつも、とてもロマンティックな演奏だ。

恋人のささやきか、母の歌う子守唄か。
この演奏には、心を鎮める優しく懐かしい響きがある。
灯りを落として、瞼を閉じて聞き入りたくなる。 


今日のTV番組では、バーンスタイン「不安の時代」のピアノ・ソロを切れ味鋭くエキサイティングに演奏しており、CDのバッハとはだいぶ趣が違ったが、放射されるオーラやしなやかで粘りのあるタッチを見て、「ああ、あのバッハは、やはり彼の演奏なんだな」と思った。

なんというか、「極める」という域に入った、とてつもないピアニストであるように思える。

ノート
・ ちなみに、このCDの裏面は・・・ 
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by bibinga | 2009-01-25 23:24 |  

2008年 今年聴いたコンサート・オペラ(日本編)

4~12月分。11月中旬以降、感想をアップしそびれていた分を、まとめて書いておく。

4月 2日(水)  Piano 4 hands (大倉山記念館)
5月 8日(木) 加納裕生野(P) (杉並公会堂/小)
6月19日(木) 平井丈一朗(Vc) 平井元喜(P) (津田ホール)
6月28日(土) 高橋節子(S) 丸山滋(P)
7月 3日(木) 松本あすか(P) (王子ホール)
7月15日(火) 中村純子(P) 柿沼麗子(Vn) (文京シビック/小)
9月22日(月) デュメイ(Vn)、小山実稚恵(P)
10月15日(水) ローザンヌ歌劇場 ビゼー「カルメン」 
10月21日(火) レイフ・オヴェ・アンスネス(P)
10月27日(月) ウィーン国立歌劇場 モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」 
10月31日(金) ウィーン国立歌劇場 ドニゼッティ「ロベルト・デヴェリュー」(演奏会形式)
11月 6日(木) 柿沼麗子(Vn) ユエ・シェン(P) (めぐろバーシモン/小)
11月11日(火) エヴァ・メイ(S)、シラクーザ(T)

d0135403_0531796.jpg11月14日(金) 工藤重典(Fl) 成田有花(P,Cemb)
(東京文化会館/小)
クープラン 王のためのコンセール第4番より
ルクレール フルートソナタホ短調0p.2-1
サン=サーンス ロマンス変ニ長調Op.37
ジュナン ヴェニスの謝肉祭Op.14
フォーレ 幻想曲Op.79
ドビュッシー パンの笛
ラヴェル ハバネラ風の小品
イベール フルート協奏曲より第2楽章
ジョリヴェ 5つの呪文より第4曲
プーランク フルートソナタ

工藤さんのフルート演奏は、香りと人間味があって、大好きである。音は金の楽器の硬質感がありながらもどこか暖かい。プーランクのソナタは、工藤さんご自身が、作曲家の自筆譜や断片的スケッチに基づいて初期の姿を復元した版で演奏された。通常演奏される版と大きく異なる箇所が、私に判別できただけでも1・3楽章では10箇所以上、2楽章は5~6箇所くらいあり、興味深く聴いた。(例えば、ピアノが旋律を弾くところで、フルートが和音の一音を伸ばしている、というような違い)

11月24日(月) アトナリテ・クール (淀橋教会)
バロック・ヴァイオリンの第一人者、赤津眞言さん(クイケン率いる「ラ・プティット・バンド」のメンバーでもある)が指導されている合唱団。コンサートでは赤津さん自ら演奏を受け持たれていた。

11月26日(水) クリスティアン・ツィメルマン(P) チョン・ミョンフン指揮
東京フィルハーモニー

(東京文化会館)
メシアン   ほほえみ
ルトスワフスキ  ピアノ協奏曲
チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

ツィメルマンのピアノは、ロンドンでリサイタルを聴いて、その独特の響きに感心したものだが、この日も確かに同じような音がしていた。彼の音は、不思議な音だ。透明だけど倍音が豊か、という感じ。ステージまで距離があって定かではないのだが、ピアノの上蓋に黒い紙(らしきもの)が張ってあったように見えた。ツィメルマンは自分でピアノをいじるらしいが、あの紙も何かの効果があるのだろうか?
チョン・ミョンフンのドライブ力は本当に凄い。悲愴では、東フィルは集中力の高い「火の出るような」熱演。指揮者の指示だろう、場面の移り変わりで、空気を替えるような音色の処理が見事だった。

d0135403_1225337.jpg12月 2日(火) イエルク・デムス(P)
(東京文化会館/小)
バッハ 半音階的幻想曲とフーガニ短調BWV903
モーツァルト 幻想曲ハ短調K475
ベートーヴェン ピアノソナタ第32番ハ短調Op.111
シューマン 子供の情景
シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調D960


イエルク・デムスと言えば、フリードリッヒ・グルダ、パウル・バドゥラ=スコダと並び「ウィーン三羽烏」と呼ばれたオーストリアの名ピアニストである。そのデムスの80歳記念コンサートがあると言うのでは、足を運ばないわけにはいかない。

プログラムは、「ど真ん中の直球」。こんな重い曲ばかり、よくも揃えたものだ。完全に自分のものになっているという自信の表れであろう。

デムスのピアノは、アンスネスやツィメルマンと比べると、古めかしいスタイルと言わざるを得ない。音色の変化はあまり無く、ダイナミクスやテンポでの味付けで勝負、という感じだ。しかし、それは決してネガティブな意味を持つものではなく、むしろ、ドイツ・オーストリア圏の作品はこういう音で弾くものだ、という正統の流儀なのだろう。

シューベルトの最後のソナタは愛好する曲の一つで、いろいろなピアニストの演奏を聴いてきたが、この日のデムスの演奏は極めつけと言ってよい。特にテンポ。「そう、このテンポなんだよ」と思う。

彼の演奏を聴いていて、ベートーヴェンやシューベルトの眠るウィーン中央墓地や、北の森のベートーヴェンの散歩道、ハイリゲンシュタットの遺書の家などの風景が脳裏に蘇ってきた。この演奏家は、作曲家が暮らしていた同じ土地で、時代は違っても、同じ光景を見、同じ言葉をしゃべり、同じ空気を感じて育ってきたのだなぁ、と感じた次第。

d0135403_1562994.jpg12月 5日(金) 藤原由紀乃(P)
(東京文化会館/小)
バッハ 半音階的幻想曲とフーガニ短調BWV903
ベートーヴェン ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」
ブラームス パガニーニの主題による変奏曲イ短調


藤原さんは、「ベアタ・ツィーグラーの『魂の耳で聴き、奏でる』自然なピアノ奏法」という独特な弾き方をされるとのことで、一度、聴いてみたいと思っていた。この日のプログラムは、当初レーガーとラフマニノフが予定されていたが、急遽曲目が変更になった。

藤原さんのピアノは、丸い響きがする。テンポもダイナミクスも、見事にコントロールされていて、曲の構成が見えるような演奏だ。ただ、私には、躍動感が不足しているように感じられ、変化をつけて弾いているにもかかわらず、幾分平板に聞こえてしまう。たぶん、これは波長の合う/合わないの問題なのだろうと思う。あと20年くらい歳をとってから聴いたら、心のツボにはまるのかもしれない。

12月 8日(月) アレクセイ・ヴォロディン(P) ゲルギエフ指揮 ロンドン交響楽団
(東京文化会館)
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番ニ短調
プロコフィエフ バレエ「ロメオとジュリエット」第1・第2組曲より


ロンドンで数え切れないほど聴いたLSO。東京で聴いても、LSOはやっぱりLSOの音がした。このオケは、アンサンブルはちょっと雑だし、音色が暗いが、とにかく骨太のゴツい音が出せる。

11月のチョン・ミョンフン&東フィルも良かったが、LSOと比べてしまうと、日本のオケはいかにも「ひ弱」だ。日本人は合奏能力はとても高く、音も澄んでいてきれいだが、「刺身」の音。過去4年間、欧州のオケを聴き慣れた耳には、どこか物足りない。

これは体格のハンディキャップなのではないか、という気がする。西洋人の頑丈で大きな体と、その体に共鳴させる音の出し方、ここが日本人にはなかなか真似ができないのではないかと思うのだ。

もちろん、音楽に「正解」というものは無く、日本人は日本人なりのアプローチで音楽をすれば良いのであるが、ここのところって、結構キモなんじゃないか。体に響かせられない音は、何となく上滑りして、芯をつかまえきれない。線の細い音は、聴いていて疲れる。感覚的な物言いで、叱られてしまうかもしれないが・・・。

アンコールに「3つのオレンジへの恋」のマーチ。これがまた、「超弩級」と言うに相応しい迫力。参りました。

フルートは前半のラフマニノフはBBC交響楽団首席のマイケル・コックスが吹いていたが、後半引っ込んでしまって残念。LSOのフルート人材難はまだ続いているようだ。
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by bibinga | 2008-12-31 23:16 |  

コンサート備忘録(エヴァ・メイ&アントニーノ・シラグーザ)

d0135403_8165321.jpg2008年11月11日(火) 東京文化会館大ホール

S) エヴァ・メイ
T) アントニーノ・シラグーザ

P) パオロ・バッラリン

                        ちなみにシラグーザは現在こうなってます・・・  ↓d0135403_8171298.jpg


ドニゼッティ 歌劇「ドン・パスクァーレ」より"その眼差しの魔力を" (メイ)
  同     歌劇「ドン・パスクァーレ」より"もう一度、愛の言葉を" (デュオ)
ベッリーニ  歌劇「清教徒」より"いとしい乙女よ、あなたに愛を"(シラグーザ)
ドニゼッティ 歌劇「連隊の娘」より"高い身分と豪勢な暮らしに…フランス万歳"(メイ)
  同    歌劇「連隊の娘」より"マリーのそばに居るために"(シラグーザ)
  同    歌劇「連隊の娘」より"何ですって? あなたが私を愛している?"(デュオ)

カルディッロ カタリ(メイ)
ララ     グラナダ(シラグーザ)
ベッリーニ 歌劇「夢遊病の女」より"おお、花よ、お前に会えるとは思わなかった…ああ、この思い
       を乱さないで"(メイ)
  同    歌劇「夢遊病の女」より"この指輪を受けてください"(デュオ)
ドニゼッティ 歌劇「愛の妙薬」より"人知れぬ涙"(シラグーザ)
  同    歌劇「愛の妙薬」より"そよ風に聞けば"(デュオ)


一晩経った今でも、興奮冷めやらない。未だに頭の中で、二人の歌声が響いている。

エヴァ・メイは、華のある歌手だ。リサイタルであっても、実に表情豊かでオペラ的な歌い方、まさに「歌姫」と呼びたくなる。ヴィブラートをたっぷりかけた鈴を転がすような美しい声は、東京文化の3階席まで、見事に通ってくる。

「連隊の娘」は昨年の1月、英国ロイヤルオペラで2度ほど観ており、その時はナタリー・デッセイとフローレスが超絶の名演を聴かせたのであったが(参考:ロンドンの椿姫さんのブログのここここここ)、エヴァ・メイのチャーミングな歌声を聴いて、当時の記憶が鮮明に蘇ってきた。メイはデッセイよりも声がfatだし、歌い方や動作が似ているわけではないが、メイのマリーもデッセイに劣らず魅力的だ。

後半の「夢遊病の女」のアリアも実に聴き応えがあり、拍手喝采。いやー、エヴァ・メイ、うまいよ、うまい!ブラヴァー!

シラグーザは、、、出だし全く良さが無く、どうなることかと思った。リリコ・レッジェーロにしては割と強い地声を持っているような気がするが、そのせいか、調子が出ないと高音域で響きが暗くなる。前半は、声量はあるものの輝きがなく、エヴァ・メイとの差が歴然だった。

ところがぎっちょん、後半になるとエンジンが温まってきたのか、俄然声に張りが出てきた。「愛の妙薬」"人知れぬ涙"は、切々とした歌い回しがツボにはまり、感動。

最後の"そよ風に聞けば"のデュオは、二人とも相当得意にしているのか実に堂に入った歌いぶり、ピアノの合いの手も抜群にセンス良く、この名コンサートを締めくくるのに相応しい名演だった。

と言ってはみたものの、実は真骨頂はアンコールにあった!

まず1曲目は、エヴァ・メイがラ・ボエムのムゼッタのワルツを歌う。ああ、あまりの美しさに身も心もとろけそう。

続いてシラグーザ。キターッ。連隊の娘、Hi-C 9連発。す、す、すごい。フローレスさまも真っ青。あまりにも平然と出すので、高音であることに気づかない人もいたのではないか、と思うくらい(もちろん、音を下げたりせず、ちゃんとCで歌ってました)。最後の9発めでは、まだまだ長~く伸ばせるぞ、と言わんがばかりに腕時計を覗き込むフリをして見せたりして余裕綽々、大したおやじである。いやー、ほんとに凄かった。

3曲目はデュオで、オー・ソレ・ミオ。これ、泣いてしまいました。言葉になりません。。。。

アンコールのラストもデュオで、ラ・トラヴィアータの乾杯の歌。言うこと無し。最高。絶句。唖然。陶然。放心。放屁(うそ)。失禁(うそ)。

もっともっと聴いていたい、素晴らしいコンサートだった。(後半からアンコールは時間の経つのを忘れて聴き入ったが、何が一番かと問われれば、オー・ソレ・ミオだなぁ。)

この後、13日(木)に池袋の芸劇で、16日(日)には大阪・サンケイホールブリーゼで公演予定あり。絶対、おすすめです。(自分自身、もう一度聞きたいと思うほど)
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by bibinga | 2008-11-13 00:52 |