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ワイン備忘録(ビトゥゼ・プリュールのヴォルネ・ピテュール96)

d0135403_2349175.jpg2008年9月21日(日)

Volnay Pitures 1996, Bitouzet-Prieur (Bourgogne, France)

久しぶりにブルゴーニュを飲みたくなり、手元在庫を物色してビトゥゼ・プリュールのヴォルネ・ピテュールを引っ張り出した。

ブルゴーニュの1996年というヴィンテージは、いまだによくわからない。一般には良い年と言われているが、今まで飲んだものはどれも酸が立ちすぎていてバランスが悪い。

このワインもそうだ。果実味・甘みなど他の要素が弱く、酸だけが突出している。

酸が強い=長命と言われているので、年月を経るにつれて丸く調和するかもしれないと思い、96はだいぶ辛抱して寝かせてきたが、今日もまた失望した。あと10年くらい待ったら、印象は変わるのだろうか・・・。

造り手の技の冴えも感じられず、結局、今一つパッとしないまま、終わってしまった。
(75点)

ノート
・ 同じ造り手のヴォルネ・クロ・デ・シェンヌ1993を2001年に2度飲んでいる。味の記憶は薄れてい
  て思い出せないが、当時のメモを見ると、良く出来ているが芯が弱い、というような意味のこと
  を書いている。
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by bibinga | 2008-09-25 23:40 |  

ワイン備忘録(イシ ラ バ97)

d0135403_0584728.jpg2008年9月13日(土)

ICI/LA-BAS "LA DETENTE" 1997 (Oregon & California,USA)


オー・ボン・クリマ(Au Bon Climat)のジム・クレンデネン氏が作っているワイン。

ラベルに American Pinot Noir と書いてある。産地を示す場合、普通は州や地方など、もっと狭い範囲を特定した地名を表示するものなので、「アメリカン・ピノ・ノワール? なんじゃ、それ?」といぶかしく思う。



d0135403_101542.jpgボトルを裏返すと、その経緯が書いてあった。

1997年は天候が不順だったため、オレゴン州産の葡萄に、カリフォルニア州メンドシーノ郡の葡萄をブレンドした。その原産地の呼称について、規制上の問題があり、アメリカン・ピノ・ノワールと名乗ることになったということのようだ。(DETENTEには緊張緩和という意味があり、妥協の産物という寓意を込めたものか?)


とてもしっとりしている。美しい赤色をしており、酸がきれいに伸びている。果実味はしっかり残っており、チェリー、紅茶、少し胡椒。米国産のワインに時々あるガムのようなわざとらしい甘さは感じない。ブルゴーニュのポマールのような印象。余韻も長い。これ、秀逸である。

若いうちに開けていたら、おそらくは、底の浅い味だったのではないかと想像する。この艶かしさは時が作り出したに違いない。大層、美味しい。
(満足度83)

ノート
・ 1999年6月購入。
・ Au Bon Climatは、頭文字を取って「ABC」と略されることあり。ただし、会話の中では「ABC」よ
  りも、普通に「オー・ボン・クリマ」と呼ばれることが多い(ような気がする)。一方、ドメーヌ・ド・ラ・
  ロマネ・コンティ(Domaine de la Romanee Conti)は、文章でも会話でも、ほとんど常に「DRC」と
  略称が使われている(ような気がする)。単に、長さと言いやすさの問題だと思うが。
・ ICI/LA-BASは、ここに/あそこに、という意味。
・ 1997年は、オレゴン州Montinore Vineyard (60%) と カリフォルニア州メンドシーノ郡Elke Vineyard
  (40%) のブレンド。
・ 通常の年は、オレゴンとメンドシーノを別々に仕込んでいるようだ。
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by bibinga | 2008-09-22 00:48 |  

ワイン備忘録(ビオ)

d0135403_2336016.jpg2008年9月12日(金)

Champagne Brut Reserve NV, Pol Roger (Champagne, France)
St.-Aubin en Remilly, Dominique Derain 2000 (Bourgogne, France)
Vin d' Alsace, Pinot Noir, Gerard Schueller 2004 (Alsace, France)


会社の後輩男女が今月結婚するので、お祝いに2人を食事に招待。

場所は、若干不便な場所にある小さなフレンチレストラン。この店は、料理人もソムリエも、こだわりを持って、自分達のやりたいことを実現している。(という評判を聞いて行ってみたが、果たして、噂どおりの素晴らしい店であった)

会社から地下鉄に乗って、都心とは逆方向に2駅。駅を降りて7分ほど歩く。こんな辺鄙な場所に美味しいレストランなんか、あるわけないよな、と不安になってきた頃に、忽然と現れる。

結婚のお祝いなので、シャンパーニュをボトルで頼み、まずは乾杯。疲れた体に、キリッと冷えたシャンパンがしゅわしゅわしゅわっと染み込む。あー、金曜の夜って、幸せだなぁ。

前菜が終わり、白に移行。

ワインリストには、興味深い銘柄が満載。ビオ系の充実が目を引く。シャソルネイでも頼もうかと思ってソムリエと話すと、「お客さん、ビオ好きでっか? ほな、こんなんありまっせ」とばかりに(実際は関西弁はしゃべってません)、リストに載っていないものをいくつか出してきた。その中からドゥランのサントーバン・アン・ルミィをもらう。

ドゥランという造り手については、カーブ・ド・リラックスという虎ノ門の酒屋のHPに詳しいので、ご興味ある方はそちらを。→カーブ・ド・リラックスのドゥラン訪問記

ドゥランは、ワイナートという雑誌で読んで知っていたが、飲むのは初めてだ。ボトルの口が、分厚く蝋で密閉されていることからも、筋金入りのビオであることが伺い知れる。グラスに注がれた液体は黄金色に輝き、期待が高まる。

ビオを飲むときは状態が健全かどうか、ちょっとドキドキするが、このワインは全く問題無かった。一口すすると、割と素直で、さっぱりしていて、薄苦い。最初はそれほどビオビオした感じはしなかったが、空気に触れるうちに、本領を発揮してきた。

新婦は、長年馬術をやっているのだが、彼女が突然、「このワイン、サイロの匂いがする」と言い出した。いきなりビオの本質をずばりついてくるとは、おそるべし。

さらに彼女は、「これ、エルちゃんの匂いがする。うん、絶対にエルちゃんだ。」とぶつぶつ言っている。エルちゃんとは、彼女の家で飼っている愛犬だそうだ。もう15歳だか17歳だか、犬としては高齢で、最近は衰えてあまり具合が良くないと言う。結局、彼女は、この白を飲んでいる間中、「エルちゃん、エルちゃん」を連呼していた。

ドゥランは、本当にサイロの干草や犬の匂いがするワインだった。まさしくビオである。雑味がなく、さらりとしていながらも、しっかりした酸と甘みがあり、口の中で粘るような強靭ささえ持っていた。これまで、それほどたくさんビオを飲んできたわけではないが、パカレやシャソルネイと比較して、ずっと骨太でパワフル、見事だ。(でも、個人的にはビオじゃない方が好きだなぁ)
(満足度84)

赤を選ぶ頃にはソムリエとすっかり打ち解けており、彼はリストをこちらに手渡すこともなく、セラーから4本ほどお薦めを出してきた。アラン・ビュルゲのジュヴシャン・ジュスティス01、エリック・マルタン(彼とはかつてドメーヌ・シュヴロで会って握手した)のマランジェ05、ジュリアン・メイエのピノノワール05、ジェラール・シュレールのピノノワール04、の4種類である。

どれも非常に興味深く、決めかねる。さんざん迷ったあげく、ソムリエが自信があるというシュレールのピノに突撃。

こ、こ、これは・・・。色は薄く、赤というよりローズピンクに近い。が、味が濃ゆい。04とは思えないほど、ひねた味がする。どうやら、このワインもビオ系らしい。

時間と共に、どんどん良くなる。全員で「美味しいーーーー」を連発。木の根、八角、紅茶、だし汁、沢庵。複雑だ。香りも味も凄い。ぐんぐん引き込まれる。アルザスのピノノワールは、実はほとんど飲んだことが無く、これほどのものとは知らなかった。恐れ入りました。
(満足度86)

この日の料理は、前菜1(3種盛り合わせ)、前菜2(フォアグラ)、冷たいスープ、魚(イトヨリ)、肉(シャラン鴨かほろほろ鳥)、デザート、コーヒー。どの品も、上っ面だけではないしっかりした美味しさがあって、心から楽しめる料理だった。デザートの前にチーズを頼んだら、状態のとても良い美味しいエポワスがたっぷり。料理もワインも120点の素晴らしいディナーであった。

月曜日、2人から御礼のeメールをもらった。新婦からのメールにはこんなことが書かれていた。

金曜日、彼女が家に帰りついた頃、愛犬エルちゃんが息を引き取ったのだという。家族の話によると、我々がドゥランの白を開け、彼女が「エルちゃんの匂いがする」と言い、しきりにエルちゃん、エルちゃんとつぶやいていた丁度その頃に、エルちゃんの意識が無くなったのだそうだ。

「あの時、エルちゃんがお別れのあいさつを言いに来てくれたんですね」と、メールに書いてあった。
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by bibinga | 2008-09-20 23:32 |  

値段と期待満足度

今週は、米国の金融不安のせいで猛烈に忙しい1週間であった。ふう、ようやく一息、やれやれ。

というわけでアップが遅くなってしまったが、前回の続きで、本日のお題は「ワインの値段と期待する満足度の水準について」である。

ワインは高い。

自分はワインに金を惜しまず、かなりバシバシとつぎ込む方であるが、そんな私ですら、3千円以上のワインは「ちょっと高いなぁ」と感じる。5千円以上のワインは滅多に買わない。一大決心が要る。1万円のワインになると、清水の舞台から飛び降りる覚悟である。

高いお金を出すからには、当然美味しいはず、と期待するのが人情というもの。5千円のワインは、千円のワインよりも美味しくなくては困る。では、一体どのくらいが「値段相応」なのだろうか?

もちろん、これは人それぞれ違うので、あくまでも私の場合ということであるが、値段と期待満足度の関係を示すと、だいたい次のようになる。

 1000円のワインに対して期待する満足度=70
 2000円のワインに対して期待する満足度=76
 3000円のワインに対して期待する満足度=79
 5000円のワインに対して期待する満足度=84
 8000円のワインに対して期待する満足度=88
10000円のワインに対して期待する満足度=90
15000円のワインに対して期待する満足度=93
20000円のワインに対して期待する満足度=95

グラフに表すとこんな感じである。
d0135403_23391297.jpg


この水準よりも満足度が高ければコストパフォーマンスの良いワイン、低ければコストパフォーマンスの悪いワイン、ということになる。

誤解を招かぬよう断っておくが、満足度の低いワインを否定しているのでは決してない。

ワインを飲むときに、ワインの良し悪しを決め付けてしまうのは好きではない。ワインに「質の違い」が存在することは確かだが、それとワインを楽しむことは別の問題だと思う。

ワインの味わいは単純に「旨い/不味い」で片付けられるものではなく、無数の軸がある。それぞれのワインにはそれぞれの個性があるのであって、その個性を楽しめば良い。それが「ワインを愛でる」ということだろう。

とは言うものの、本当に美味しいワインを口にすると、個性だの特徴だの、そういう理屈っぽいことは全て吹き飛んでしまう。ひたすら笑いがこみ上げてくるか、涙があふれるか、うーうー唸るか。思考まで行かずに、感性だけで反応してしまう。

こうしてワインにはまってしまったら、もう大変。家計は火の車、体を害し、家族からは見放され、あはれ悲惨な末路へと突き進んでいくのであつた・・・。(良い子は真似してはいけません)

おまけ:「ワインのコストパフォーマンス4象限」

高くて美味しいのは当たり前。(だけど嬉しい)d0135403_23201827.jpg

高くて不味いのは最悪。(すごく悲しい)d0135403_23204917.jpg

安くて不味いのは仕方が無い。(だけど悔しい)d0135403_23211994.jpg

安くて美味しいのはラッキー。(うれぴー)d0135403_23214767.jpg

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by bibinga | 2008-09-19 23:57 |  

満足度

最近のワイン備忘録に「満足度」を記している。

ワインをスコア化することを好まない方もいらっしゃると思うが、ちょっとした戯れなので、目くじら立てず、大目に見ていただきたい。(飽きたら、やめるかもしれませんし…)

ここでつけているスコアは、ワインそのものに対する評価ではなく、ワインを飲んだ時の自分の感動の大きさを表したものである。「どう違うのか?」と聞かれても上手く説明できないが、微妙にちがうんだな…。

70が合格ラインである。

満足感が得られれば70以上、得られなければ70未満になる。下方には許容度が広く、ほとんどのワインは70以上になる。逆に上方には割と厳しく、80がつくのはかなり満足度が高いワインだ。

以下が、だいたいの目安である。

70から下方には、
 70未満 飲んだことを後悔する「無念」のワイン。
 60未満 やり場のない悲しみと怒りを覚える「悲憤」のワイン。
 50未満 怒りを通り越して無力感に襲われる「寂寥」のワイン。

上方には、
 70以上 一応合格だが、「凡常」のワイン。
 75以上 まずまず満足、「納得」のワイン。
 80以上 かなり満足度が高い「悦楽」のワイン。気分良く、饒舌になる。
 85以上 すごく満足度が高い「感謝」のワイン。生きてて良かったとしみじみ思う。
 90以上 非常に満足度が高い「至福」のワイン。美味しさに笑いが止まらない。
 95以上 最高に満足度が高い「落涙」のワイン。言葉すら出ず、ひたすら泣く。
 98     「法悦」のワイン。あう~。イッてしまいました。
 99     「恍惚」のワイン。ばぶー。往ってしまいました。
 100    「昇天」のワイン。ぶちっ。逝ってしまいました。

ちなみに、ここでいう満足度はワインの味わいそのものに対する満足度であり、「価格対比」は考慮していない。(とはいえ、無意識のうちに、味覚・嗅覚が値段に影響されてしまっていることはあり得るが)

価格と満足度(の期待水準)の関係については、次回述べることとしたい。
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by bibinga | 2008-09-15 11:33 |  

ワイン備忘録(ヤラ・イエリング93)

d0135403_23104261.jpg2008年9月6日(土)

Yarra Yering Dry Red No.1 1993 (Coldstream, Victoria, Australia)

1997年にヴィノスやまざきで買ったもの。

ヴィノスやまざきは静岡の酒屋であるが、世界各地を自分の足で回り、優良銘柄を発掘して直接買い付ける商売(「蔵直」と称している)が当たり、街の酒屋から脱皮した。今では静岡本店の他、有楽町や渋谷など都内にも5店を構える大きな酒屋に成長している。

この店の「蔵直」のラインナップは、1000円台・2000円台で品質の良い銘柄を揃えており、なかなか重宝であった。手元の記録を調べたら、1995~2001年にかけて、この店からなんと254本も買っている! ただ、蔵直のビジネスモデルもやや古くなった感があり、2001年にプピーユ98を1ケース買ったのを最後に、もうここからは買っていない。

今回開けたヤラ・イエリングは、やまざきの頒布会(月5000円コース)の中の1本として届いたもので、「蔵直」銘柄ではなく、ヴィレッジ・セラーズという別の会社が輸入したものだ。

購入以来、11年も大切に保管してきた愛着のある1本である。生産量の少ない銘柄で、90年代前半のヴィンテージは、探してもまず手に入らないだろう。貴重な1本であり、開けるかどうか相当迷ったが、瓶の方から「だんな、わたしゃ、そろそろ飲み頃ですぜ」と囁きかけてきたので、思い切って開けることにした。

ボトルを手に取ってみると、高価なワインにしては、瓶がちゃち。軽くて、背も低い。
コルクを抜くと、コルクが短い。不安になる。(高級ワインは概して「重い瓶、長いコルク」なのだ)

開かせるためにデキャンタージュしてみることにした。ただ、古酒の場合、空気に触れると一瞬でヘタってしまうリスクがあり、93年は古酒というほど古くはないが、一応安全策を取り、半分だけデキャンタし、半分は瓶に残す。

まずデキャンタした方からグラスに注ぎ、おそるおそる香りを嗅ぐ。

おお! わんだふる!

回転を与えてやると凄い量の香りが出てくる。ラズベリーなど赤い果実が支配的だ。
美しい赤。きれいな酸が乗っている。熟成感は十分にあるが、古漬けのようなひねた香りや獣臭はしない。純粋で、鮮度が保たれている。

ドライレッド No.1は、カベルネ・ソーヴィニョン主体のボルドースタイルの赤である。若いワインならオーストラリアとフランスを識別できると思うが、このくらい時間が経ったワインになると、正直、私にはわからない。このワインは、ブラインドで飲んだら、ボルドー、それも相当に上位のシャトーだと言い切ってしまうだろう。

それにしても旨い。香りがいつまでも鼻腔に残る。
飲むほどに旨さが加速し、ますます旨くなる。これ、良いワインの特徴だ。
酔い心地が良い。体がどんどん軽くなっていく。

デキャンタした分がなくなったので、ボトルに残しておいた分をグラスにつぐ。
と、明らかに違う。閉じていて、酸が重たい。

効果が確認できたので、ボトルのワインを、全てデキャンタに移す。(もちろん澱は残す)

飲む。旨い。
思わず笑いがこみ上げてくる。
わはは。うまい。わはは。飲む。わはは。飲む。わはははは。

11年育ててきて、飲むのは一瞬。しかし、その一瞬に愉悦が凝縮されていた。
(満足度90)
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by bibinga | 2008-09-07 23:10 |  

ホスト・テースティング

昨日書き損ねたホスト・テースティングについて。

ホスト・テースティングとは、レストランでワインを注文した時、ソムリエ(または単なる店員)が恭しく「どなたか味見をなさいますか?」と聞き、ホスト役が「じゃ、わたしが・・・」などと言ってグラスをツイと押しやる、例のアレである。

ホスト・テースティングの目的は、ワインが傷んでいないか、状態を確認することにある。

「そんなの、形式、でしょ?」とお思いかもしれないが、ブショネにやられているワインは意外に多いもので、20~30本に1本くらいの割合で出るから、実はテースティングは重要なのだ。

まともなレストランならワインの交換は発生し得るコストとして見込んでいる。だからテースティングして味が気になったら、遠慮せずに言って構わない。もし自信が無ければ、「よくわからないので念のためご確認いただけますか」と頼めば、ソムリエが状態をチェックして、傷んでいれば別のボトルに替えてくれる(はず)。

とはいえ店にとって手痛いことは間違いなく、さほど気にならない程度のごく軽いブショネなら、交換させるのは店に気の毒なので、私は「飲めるからいいよ」とそのまま飲んでしまうことが多い。

例外的に交換できない場合として、古酒がある。古酒については客が傷んでいるリスクを承知で注文するもの、という認識が一般的であり、状態が悪くても交換に応じなかったり、または店と客の折半になることが多い。もちろん、トラブルを避けるため、古酒を注文しようとする客には、ソムリエが古酒のリスクや交換方針について、あらかじめ説明するはずである。

また、ソムリエを置いていないレストランでは、正当なクレームをつけても、店側がブショネを理解できず、揉める可能性がある。そういう店では、(交換できなくてもあきらめがつくように)そもそも高いワインは頼まないのが利口というものだ。


ところで、ソムリエがブショネに気づいたものの、客がテースティングでOKを出し、そのまま飲み始めたらどうなるだろうか?

おそらく、それは交換されず、そのままである。昨日書いたボーヌのベナトンの例でも、こちらから言い出さない限り、ソムリエは黙っていた。気づかないということは、まさしく気づかないわけだから、それで良しということだろう。

店としても、客が気づかないのに自らワインの交換を提案したりすれば、ワインの仕入れ代は丸損だし、その上、「あの店は最初悪いワインを出してきた」などとネガティブな印象が残ったりしたら、踏んだり蹴ったりである。

ただし、(ここからは想像であるが)一流のソムリエになると、この客がどういう客か、つまり、ワインに対する造詣の深さ、マナー、性格、社会的地位、財布の中身、過去の来店歴、好みの女性のタイプ(ウソ)などを瞬時に見抜き、さりげなく間合いを測りながら、ある場合には自ら交換を申し出、ある場合には客の反応を覗うなど、臨機応変に対応できるのかもしれない。

そして、超一流のソムリエになると、客によって対応を変えるなどという小賢しいことはせず、どんなにレベルの低い客であっても決して見下すことなく、客に恥ずかしい思いをさせることもなく、ブショネのワインなどごく自然にさらっと交換してしまう・・・、のだろうなぁ。(こういう店はきっとお値段も最高・・・)


ちなみに、テースティングして、「味が気に入らないから替えてくれ」と言う人がたまにいるようだが、これは反則である。テースティングは味の好みではなく、ワインの状態を見るものだからだ。

同じ理屈の裏返しで、1本のワインが空いた後、同じものを追加で頼んだ場合に、「同じ銘柄だから、テースティング要りません」と断る人がいるが、これもちょっと違う。同じ銘柄であっても、ワインの状態は1本1本異なるからである。

退屈な話になってしまった。 <(_ _)>
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by bibinga | 2008-09-03 00:05 |  

ブショネ

昨日の続きで、ブショネについて、もう少し詳しく書いてみたい。

ブショネとは、コルクに異臭が発生して、それがワインに移ったものを言う。なぜ異臭が生じるのかは諸説あるが、コルクを漂白する時に使う塩素が残留して化学反応を起こしたもの、というのが定説のようである。

ブショネは特有の匂いがするが、これを言葉で表現するのはなかなか難しく、「傷みかけの野菜」と言う人があれば、「濡れたブロック」「新建材」「切り立ての木」と言う人もいる。私は「杉板をくるんであった新聞紙が湿った匂い」が近いような気がする。

また、ブショネのワインというのは、ブショネの匂いを我慢して飲んだとしても、それ以外の旨みも消えていて、味気ないワインになっていることが多い。(その意味では、昨日書いたサランラップ法によって、仮にブショネ香が除去できたとしても、ワインの美味しさが復活するかどうかははなはだ疑問である)

ブショネは、相当ワインを飲み込んでいる人でも気づかないことがある。

以前、ワイン好き3人で、ボーヌのベナトンというレストランに出かけた時のこと。日本人のソムリエがいて、「せっかく遠路やってきたので、良いワインを」と彼に相談し、少々高いワインを奮発して頼んだ。仲間の1人がテースティングしてOKを出したが、その後、私は自分のグラスに注がれたワインを一嗅ぎして軽いブショネではないかと思った。

しかし、「これ、ブショネっぽくない?」と聞いても、仲間2人とも「どこか変ですか?」と首を捻っている。そこでソムリエ氏に「ちょっと嗅いでみて」と頼んだところ、「正直に申し上げますと、抜栓したコルクの匂いを確かめた時にブショネだな、と思いました」と言い、あっさりと別のボトルに交換してくれた。やはりブショネだったようだが、これだけワインを良く飲んでいる仲間2人でもよくわからないのは、かなり意外なことだった。

してみると、人間の五感というのは、人によって少しずつ設計が違っているのだろう。それは「良い悪い」という単純な話ではなくて、味覚・嗅覚で言えば、味や香りのいろいろな構成要素のどの部分にどのように反応するのか、人それぞれ異なる、微妙な「感度の個性」を持っているのではないか、と思うのだ。

つまり、ブショネがわかるから鼻がいい、ということではなく、ある人はブショネがわかる代わりに別の香りには鈍かったり、またある人はブショネはわからなくても別の何かにはものすごく敏感だったりするのではないか。

そういえば、耳についても同じような経験がある。

以前、自分の演奏を録音してCD-Rに焼いたのだが、その時、CD-Rのメーカーによって音が違うことに気づいた。最初ソニー製の盤に焼いて、なかなか良い音質だと思ったが、フィリップスのラベルプリント対応の盤に焼いたところ、明らかに音が悪い。念のため、両盤3枚ずつ追加で焼いてみたが、同じ結果だった。

え? ディジタルって0か1かのデータだよね、それなのにメーカーによって音が違うなんてことあるかね? と狼狽し、試しにマクセルの音楽用CD-Rを買ってきて焼いてみたら、これまた音が違う。

ソニーは、明るくて、空間が感じられる音。
マクセル(XL-Ⅱmusic)は、しっとりとして落ち着いた音。
フィリップスは、何か要素が欠けていて潤いの無い音。

(誤解なきよう、メーカーの優劣を論じる意図はない。ポイントは、盤によって音が違うということ。各社とも複数種類の盤を製造しており、同じメーカーでも別の種類の盤はまた別の特徴を持っているのではないかと思う)

でも、この違い、なかなか人にわかってもらえない。自分では、ソニーとフィリップスと、誰かにランダムにかけてもらったら、10回中10回当てられる自信があるのだが・・・。

こう書くと自分はさも耳が良いように聞こえるかもしれないが、実は、私は右耳が少し遠い。正常な人に比べて、聞こえる音が絶対量として少ないのは間違いなく、良い耳であるはずはない。

そう、繰り返しになるが、単に耳が良いとか悪いではなく、人によって感度の働く部分が異なっていて、たぶん一人ひとり、聞こえ方が違うのだ。日常生活の中ではその違いはミクロだし、人と比較することも無いので、自分の耳がどういう音に敏感でどういう音に鈍いのか、その特徴に気がついていないだけなのだ。

このように考えてくると、視覚についても疑わしくなってくる。自分が赤だと思っているものが、他人にも赤く見えているのだろうか? 赤は、A君には青く、B君には緑に、C君には黄色に見えていたりするのではないか? まあ、そういう極端なことは無いとしても、おそらく、日常意識しないレベルで、人それぞれ、色の感じ方は微妙に違っているに違いないと思う。

試しに右目、左目、片目ずつ開いて注意深く比較してみたら、私の場合、左目は右目より見え方が少しだけ暗く、ごく薄いベージュかグレーのサングラスをかけたような見え方をする。自分の目ですら、右と左で色が違って見えていたのだ。へえー、何十年も生きてきて、初めて気づいたぞ。

ゴッホ、モネ、ゴーギャン、セザンヌ、、、、画家による絵の色調の違いというのも、案外、こういう部分から来ていたりするのかもしれない。

あれ、ワインの話を書くはずが、いつの間にか話が全く違う方向に行ってしまった。ブショネから「ホスト・テースティングの目的」という話につなげるはずだったのに・・・。ま、今日のところは、どうか「五感べん」を。
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by bibinga | 2008-09-02 01:37 |