コンサート備忘録(ナタリー・デセイ)
2008年1月26日(土) バービカン・センター
ソプラノ)ナタリー・デセイ
エヴェリーノ・ピド指揮
コンチェルト・ケルン
※ デセイの日本語標記について、ドゥセとするのが原語の発音に近いと思われるが、ここでは一般的な標記に従いデセイを使っている。そうしないと、ドビュッシーもドゥビュッスィーと書かねばならなくなってしまうので(笑)。
ドニゼッティ ロベルト・デヴリュー序曲
ドニゼッティ マリア・ストゥアルダ~ O nube (雲よ)
ベッリーニ 清教徒~O rendetemi la speme(私に希望を返して)
ケルビーニ 交響曲二長調
ヴェルディ リゴレット~Gualtier Malde - Caro nome(慕わしき人の名は)
ヴェルディ 椿姫~第1幕への前奏曲
ヴェルディ 椿姫~E strano - Ah, fors’e lu - Sempre libera(不思議だわ-そはかの人か-花から花へ)
プログラムを知って「おお!」と思わず声が出る。ナタリーで聞きたかった名アリアばかりだ。
しかも、椿姫が入っている。ロイヤルオペラで椿姫を上演中であることは先日来書いているとおりだが、まさにこの日のこの時間、ロイヤルオペラではネトレプコが復活して椿姫を歌っている。このプログラムは「ネトレプコへの挑戦状か?」などと勘ぐってしまう。(実際はそうではなく、新作CDの収録曲どおり、というのが真相のようである)
ナタリー・デセイのCDやDVDは以前から持っているが、初めて生を聴いたのは昨年1月ロイヤルオペラでの「連隊の娘」だった。この時のナタリーの歌と演技があまりに素晴らしく(共演のフローレスも抜群だったが)、すっかり惚れ込んでしまった。ロンドンでは滅多に歌ってくれないので、今日の演奏会を首を長くして待っていた。
1曲目はオケのみ。コンチェルト・ケルンは名の通ったピリオド系アンサンブルである。技術水準はまずまず。ピドの指揮に応えて、乗りの良い演奏。
2曲目、ナタリーが黒のドレスで颯爽と登場。その姿のなんと凛々しくカッコイイことよ!
ところが、ナタリー、オケが演奏を始めているのに咳をしている。体調が悪いのか?
果たして声はやや詰まり気味で、高音もどことなく苦しそうである。
ベッリーニは少し改善。曲の素晴らしさにも助けられ、プチ感動。
結局、前半は今一つ調子の出ないまま終了。
後半の最初はオケのみのケルビーニ。長くて飽きる。
後半2曲目、ジルダ。ナタリーは、黒のスーツで登場。袖の折り返しの鮮やかなピンクが洒落ている。うーむ、超カッコイイ。ひゅうひゅうっ!(内心叫んだだけで、声は出してません)
前半とはうって変わって声が伸びてきた。いやー、いいんじゃないの、これ。最後のトリル、ひっぱるひっぱる。ずーっとトリルを続けたまま、ステージを降りて楽屋に消えていった。細い糸1本、ピーンと張り詰めているようだ。ppだが、2階席まで信じられないくらい明瞭に届いてくる。ブラヴァ!!
(何をとち狂ったか、今日のコンサート、サークル席を買ってしまっていた・・・。でも、結果的には全く問題なし。この人の声はものすごく良く通る)
トリはいよいよトラヴィアータ。ロイヤルオペラで14日にネトレプコ、17・23日にヤオで聴いているだけに、比較が楽しみである。
(23日のヤオの歌いぶりは日記には書かなかったが、17日をはるかに上回り、素晴らしい出来であった。この人のヴィオレッタ、今後相当人気が出るのではないか? 右はヤオの23日のショット)
ナタリーのトラヴィアータは、ネトレプコともヤオとも全く異なっている。「至芸」というに相応しい。歌も身振りも、吸い込まれそうに魅力的だ。声そのもの、表情付け、動作の一つ一つ、全てに香りがあって、感性のスイートスポットにカツーンとくる。エレガント、キュート、コケティッシュ、チャーミング、ソフィスティケイティド、インテリジェント、、、、と形容詞は幾つも思い浮かぶけれど、どんな言葉も陳腐に思えてしまう。
ネトレプコがパワーで圧倒する「押しの芸」だとすれば、ナタリーは彼女の魅力が人を惹き付ける「引力の芸」と言えるかもしれない。ヤオは、、、ヴィオレッタへの「同化の芸」か。
前向きなヴィオレッタ(ネトレプコ)、薄幸のヴィオレッタ(ヤオ)、素敵で愛さずにいられないヴィオレッタ(デセイ)、三者三様の個性である。(ちょっと短絡的すぎるか・・・)
ナタリー・デセイの魅力は、シルヴィ・ギエムに通じるところがある。この2人は、まさにフランスの誇る人間国宝だ。この2人のステージは見られる限り、何度でも見たい。
ネトレプコがどんなに凄くても、ナタリーの前では、所詮「下町の玉三郎」に思えてしまう。芸のレベルが違いすぎる。うーむ、つい昨日までアンナにネトレプコに入れ込んでいたのに(つまらない駄洒落で失礼)、我ながら心変わりが早いな…。
アンコールは2曲。1曲めは知らない曲だったが、2曲目はルチアだ。これがまた素晴らしい。涙ちょちょぎれる。
終演後、サイン会があった。コンサートが終わるとそそくさと家路を急ぐのが常で、こういう催しには興味が無いのだが、今日だけはナタリーを至近距離で見たくて、会場で一緒になったMさんと列に並んだ(正確には、Mさんにダッシュして並んでいただいた)。
新作CDにナタリーのサインをもらって、気分は上々。このCDにはアンコールのルチア含めて今日の演目がそっくり収録されており、伴奏も同じピド&コンチェルト・ケルン。良い記念になった。
ソプラノ)ナタリー・デセイ
エヴェリーノ・ピド指揮
コンチェルト・ケルン
※ デセイの日本語標記について、ドゥセとするのが原語の発音に近いと思われるが、ここでは一般的な標記に従いデセイを使っている。そうしないと、ドビュッシーもドゥビュッスィーと書かねばならなくなってしまうので(笑)。
ドニゼッティ ロベルト・デヴリュー序曲
ドニゼッティ マリア・ストゥアルダ~ O nube (雲よ)
ベッリーニ 清教徒~O rendetemi la speme(私に希望を返して)
ケルビーニ 交響曲二長調
ヴェルディ リゴレット~Gualtier Malde - Caro nome(慕わしき人の名は)
ヴェルディ 椿姫~第1幕への前奏曲
ヴェルディ 椿姫~E strano - Ah, fors’e lu - Sempre libera(不思議だわ-そはかの人か-花から花へ)
プログラムを知って「おお!」と思わず声が出る。ナタリーで聞きたかった名アリアばかりだ。
しかも、椿姫が入っている。ロイヤルオペラで椿姫を上演中であることは先日来書いているとおりだが、まさにこの日のこの時間、ロイヤルオペラではネトレプコが復活して椿姫を歌っている。このプログラムは「ネトレプコへの挑戦状か?」などと勘ぐってしまう。(実際はそうではなく、新作CDの収録曲どおり、というのが真相のようである)
ナタリー・デセイのCDやDVDは以前から持っているが、初めて生を聴いたのは昨年1月ロイヤルオペラでの「連隊の娘」だった。この時のナタリーの歌と演技があまりに素晴らしく(共演のフローレスも抜群だったが)、すっかり惚れ込んでしまった。ロンドンでは滅多に歌ってくれないので、今日の演奏会を首を長くして待っていた。
1曲目はオケのみ。コンチェルト・ケルンは名の通ったピリオド系アンサンブルである。技術水準はまずまず。ピドの指揮に応えて、乗りの良い演奏。
2曲目、ナタリーが黒のドレスで颯爽と登場。その姿のなんと凛々しくカッコイイことよ!
ところが、ナタリー、オケが演奏を始めているのに咳をしている。体調が悪いのか?
果たして声はやや詰まり気味で、高音もどことなく苦しそうである。
ベッリーニは少し改善。曲の素晴らしさにも助けられ、プチ感動。
結局、前半は今一つ調子の出ないまま終了。
後半の最初はオケのみのケルビーニ。長くて飽きる。
後半2曲目、ジルダ。ナタリーは、黒のスーツで登場。袖の折り返しの鮮やかなピンクが洒落ている。うーむ、超カッコイイ。ひゅうひゅうっ!(内心叫んだだけで、声は出してません)
前半とはうって変わって声が伸びてきた。いやー、いいんじゃないの、これ。最後のトリル、ひっぱるひっぱる。ずーっとトリルを続けたまま、ステージを降りて楽屋に消えていった。細い糸1本、ピーンと張り詰めているようだ。ppだが、2階席まで信じられないくらい明瞭に届いてくる。ブラヴァ!!
(何をとち狂ったか、今日のコンサート、サークル席を買ってしまっていた・・・。でも、結果的には全く問題なし。この人の声はものすごく良く通る)
トリはいよいよトラヴィアータ。ロイヤルオペラで14日にネトレプコ、17・23日にヤオで聴いているだけに、比較が楽しみである。
(23日のヤオの歌いぶりは日記には書かなかったが、17日をはるかに上回り、素晴らしい出来であった。この人のヴィオレッタ、今後相当人気が出るのではないか? 右はヤオの23日のショット)
ナタリーのトラヴィアータは、ネトレプコともヤオとも全く異なっている。「至芸」というに相応しい。歌も身振りも、吸い込まれそうに魅力的だ。声そのもの、表情付け、動作の一つ一つ、全てに香りがあって、感性のスイートスポットにカツーンとくる。エレガント、キュート、コケティッシュ、チャーミング、ソフィスティケイティド、インテリジェント、、、、と形容詞は幾つも思い浮かぶけれど、どんな言葉も陳腐に思えてしまう。
ネトレプコがパワーで圧倒する「押しの芸」だとすれば、ナタリーは彼女の魅力が人を惹き付ける「引力の芸」と言えるかもしれない。ヤオは、、、ヴィオレッタへの「同化の芸」か。
前向きなヴィオレッタ(ネトレプコ)、薄幸のヴィオレッタ(ヤオ)、素敵で愛さずにいられないヴィオレッタ(デセイ)、三者三様の個性である。(ちょっと短絡的すぎるか・・・)
ナタリー・デセイの魅力は、シルヴィ・ギエムに通じるところがある。この2人は、まさにフランスの誇る人間国宝だ。この2人のステージは見られる限り、何度でも見たい。
ネトレプコがどんなに凄くても、ナタリーの前では、所詮「下町の玉三郎」に思えてしまう。芸のレベルが違いすぎる。うーむ、つい昨日までアンナにネトレプコに入れ込んでいたのに(つまらない駄洒落で失礼)、我ながら心変わりが早いな…。
アンコールは2曲。1曲めは知らない曲だったが、2曲目はルチアだ。これがまた素晴らしい。涙ちょちょぎれる。
終演後、サイン会があった。コンサートが終わるとそそくさと家路を急ぐのが常で、こういう催しには興味が無いのだが、今日だけはナタリーを至近距離で見たくて、会場で一緒になったMさんと列に並んだ(正確には、Mさんにダッシュして並んでいただいた)。
新作CDにナタリーのサインをもらって、気分は上々。このCDにはアンコールのルチア含めて今日の演目がそっくり収録されており、伴奏も同じピド&コンチェルト・ケルン。良い記念になった。
by bibinga | 2008-01-26 23:53 | 音